原作設定(補完)

□その4
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♯33

作成:2015/04/26




なけなしの金で団子を一本買い、店先でそれをのんびり食べていると、通りを土方が歩いてくるのが見えた。

真選組副長の土方十四郎。男の名前を覚えるのが苦手な銀時だったが、なぜかその名前は記憶に残った。

その理由を考えないでいるには原因がある。

土方は、煙草を吸おうとライターを着けたがガス切れのせいか火が出なかったようで、数回試し諦めて煙草を戻した。

それを見ていた銀時。

懐に今朝お登勢で朝食を食べたとき店から持ってきたマッチが入ってる。

土方が銀時に気付き不機嫌そうな顔で寄ってきた。ヤニ切れのせいではなく、いつでもこんな感じだ。

「今日も暇そうだな」

「たまたま暇なだけですぅ」

「週休6日はたまたまとは言わねーな。うちと足して二で割って欲しいもんだ」

「……お忙しいようで大変ですねぇ」

「おう。無駄な立ち話をする暇はねーから行くわ。じゃあな」

自分から話しかけといて、と文句を言ったら倍になって返ってきそうなのでそのまま見送る。

『可愛くねーやつ』

銀時は懐で掴んでいたマッチから手を離した。

これが原因。顔を合わせるたびにイラッとさせられる相手が、自分にとってどんな存在かなんて考えたくもない。



団子を食い終わってそろそろ帰るかと思ったとき、土方を追いかけるように山崎がやってきた。

「旦那、こんにちは。副長見ましたか?」

「さっき通った」

「ありがとうございます」

「あ、ジミー。邪魔だからこれ捨てといてくれや」

振り返った山崎に、マッチを投げて渡す。

「ちょっと、マッチなんてその辺に捨てられませんよ、危ないから」

と言ってはみたものの、銀時はさっさと歩いて行ってしまったので、あとで屯所で捨てようと懐に入れた。



結局集合場所で追いついた山崎は、土方に連絡事項を伝える。

いつもの癖で煙草を取り出し火をつけようとした土方は、ライターが使えないことを思い出して顔をしかめ煙草を戻そうとした。

それを見ていた山崎がマッチを渡す。

「火ですか?これどうぞ」

「お、気がきくじゃねーか♪」

山崎を褒めマッチを使おうとしたとき、それが万事屋の下にあるスナック・お登勢のものだと気が付いた。

「山崎、これどうしたんだ」

「さっき旦那に会って、いらないからって押し付けられました」

偶然なはずがない。きっと話す前に煙草を諦めたところから見ていたのだろう。

万事屋の坂田銀時。天然パーマで死んだ魚のような目をした、いい加減な男。

垣間見せる芯の強さに惹かれ仲良くなりたいと思っているのに、素直になれず憎まれ口をきく土方に後ろからそっと優しさを見せる。

それを直接見せてくれたらもうちょっと歩み寄ることができる気がするのに、と自分のことを棚に上げてそう思った。

『可愛くねーやつ』





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めずらしく土方のほうは好きなんだけど銀さんはまだまだ無自覚な話。
”土方好き好き”な銀さんが好き。





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