原作設定(補完)
□その3
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♯26
作成:2015/04/20
「ただいま〜」
「銀ちゃーん、お土産アル〜」
朝9時、万事屋にいつもの騒がしさが戻ってきた。昨夜はお妙のところに泊まった神楽が新八と帰ってきたのだ。
リビングにいない銀時に、まだ寝てるのかと和室の襖を開けて、凍りつく。
「お、おかえり……」
「……」
寝起き+ひきつった笑顔で迎えてくれた銀時だが、いつもの黒い服の上も下もファスナー全開。
さらに同じ布団の上で、顔を背けた土方が着てるのは銀時の白い着流し。
慌てて身繕いしたようだが、
「ごまかせてませんよ」
何がどうなってるのか、小学生相手でも言いくるめるのは難しい状況だった。
きちんと身支度を整えた大人二人は並んでソファーに座り、微妙な顔をしている子供二人の前で小さくなっていた。
「つまり、土方さんと銀さんは付き合ってるってことなんですよね」
「……まー、そうです」
「……」
動揺して手足を意味もなく動かす銀時、顔を背けたままぎゅっと手を握りしめた土方。二人とも顔が真っ赤だ。逃げ出したいのを押さえて説明してくれたのだろう。
それだけで十分だった新八は、二人が楽になるように敢えて興味ないような言い方をした。
「別にいいですよ。はっきり言えば僕には関係ないんで」
しかし、
「……たい…アル……」
「神楽ちゃん?」
「絶対反対アル!!!」
もっとあっさり認めるかと思われた神楽が瞳をきつく歪ませて叫んだ。
「神楽ちゃ〜ん、酢昆布買ってやるから、な?」
必死に神楽の機嫌をとろうとしてる銀時の隣で、土方が表情を曇らせている。この場合、拒絶されているのは土方の方だからだ。
可哀想になって新八も銀時のフォローに回る。
「神楽ちゃん、何か心配なの?」
酢昆布の誘惑にも負けぬ頑なな態度の原因究明から始めた新八の問いに、神楽はようやく話し出した。
「お前らいい年なんだから結婚をぜんてーに、になんだろ。そしたら、ここで一緒に暮らすとか言い出すネ」
神楽が好きなのはドロドロの人間関係が渦巻き、浮気、不倫、離婚がお約束のホームドラマだ。
いい年なんだから、にショックを受ける土方。一緒に暮らす、に興奮する銀時。結婚を前提に、は無理だからと内心つっこむ新八。
「一緒に暮らすことになったら、ワタシ……ワタシの……」
ずっと二人で暮らしてきた神楽にとって銀時は父親や兄のような存在で、そこに恋人が現れたら居場所を無くしてしまう気持ちなのかもしれない。
生意気ばかり言ってもまだまだ子供なんだとしんみりした三人は、
「……神楽ちゃん」
「ワタシの食いぶちが減るアルぅぅうう!!!」
『え、そこ!?』
とツッコンだ。
「それじゃなくても、給料ほとんどもらえず酢昆布でごまかされたり、卵ごはんもお代わりできなかったり、定春のごはんを三等分したこともあるネ……銀ちゃんの稼ぎじゃ四人も生きていけないアル〜〜」
神楽の長く切ない愚痴に、社長兼保護者の銀時は小さくなるしかない。
『定春…のごはん…』
犬とドッグフードに視線をやり、土方は大きな溜め息をついた。酷いとは思っていたが、ここまでとは。
しょんぼりする神楽に、土方は高給取りの微笑みで言った。
「大丈夫だ。真選組は辞めないし、お前らのメシぐらいなんとかしてやる」
「…ほんとアルか?毎日“ごはんで○よ”食べていいアルか?」
「まかせとけ」
「…マヨラ〜〜〜〜っ」
『うんうん、いい話だ』
分かり合った後妻と娘のような雰囲気の二人に、感動する銀時と新八。
崩壊するかと思った坂田家の人間図はあるべき位置に収まった、金の力で。
「良かったアルね〜、定春。これで毎日ご飯が食べられるアルよ〜」
定春にもふもふしながら喜ぶ神楽と、
「仕事はキチンとしやがれ!従業員にメシの心配されるとかありえねーだろ!ましてやペットのメシを三等分んん!?このマダオがぁぁああ!!」
「……」
正座で向き合い、叱責する土方、しゅんとする銀時。
『…おもしれっ』
そんな三人を眺めて、とりあえず一歩引いたところから傍観する新八だった。
おまけ(だけしんみりと)
あれから初めて二人きりで会った夜。
土方の体にキスを繰り返しながら銀時は言った。
「いつうちに来てくれんの?」
「……てめーがちゃんと稼げるようになったらな」
「無理っ」
「ダメなほうに自信満々かよ」
「それにお前がうちの家庭支えてくれんだろ」
「……」
「……なんてな……お前がああ言ってくれただけですっげー嬉しかった」
普段ふざけたことばかり言うくせに、人から与えられることに期待しない銀時。
頬に手を当て引き寄せてから深く口づけたあと、土方は神楽を説得したときと同じ笑みで言った。
「なめんな。俺はてめーと違って言ったことは必ずやる男なんだよ」
「……楽しみにしてる」
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新八、神楽にバレて四人仲良く、ってのが好きです。
神楽が反対したら、からの妄想。
ま、オチはこんなもんです。暗くしません(笑)
おまけは予定外で、しかもテンション違うし…
銀さんを幸せにしてあげてください、副長さん。