原作設定(補完)

□その3
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7日目。

飴を食べるのを見届けたあと、土方は思いきって言ってみた。飴の効果か、この7日で会話は随分できるようになっていたが、やはり緊張する。

「…昼飯、食いに行かねーか?」

「いいよ」

普通に答えた銀時に、土方はほっとして笑みが漏れてしまった。ずっと、こんなふうに話したかったのだから。



いつもの定食屋でいつものメニューを頼み、お互い気持ち悪いと文句を言い合ったのに最後まで一緒に食べた。それだけのことが本当に嬉しかった。


「…じゃ、な」

互いの家に戻る道の分岐点で、土方は名残惜しいと思う気持ちを押さえて背中を向けるが、銀時がそれを呼び止め、

「土方っ……その…」

言いにくそうな仕草を何度か繰り返してから、ようやく声に出した。

「……俺……お前が…好きだ…」

その言葉に土方は息が止まった。手が震える。

違う、そんなこと望んだわけじゃない。そんなことを言わせてしまうほどの効き目を求めたわけじゃない。

本当なら言うはずのない言葉を自分の身勝手な行動で言わせてしまった。

「土方?」

「…ごめん…俺のせいでっ…」

お前に気持ちが変わる飴を食べさせていたと言うことができなくて、土方はその場から逃げ出した。

「土方っ!ちがっ……や、やばぁぁっ」

動揺して座り込んだ銀時だったが、慌てて土方を追いかける。



土方は屯所に駆け戻り沖田を探した。効果を消すような薬があるのか確かめたかったのだが、予定表を見たら1番隊は市中見廻りに出ている。

帰りをじっと待っていられず、沖田を探しに屯所を飛び出したところで腕を捕まれた。

屯所の中には入れなかったので出てくるのを待っていた銀時だ。

「…よろ…」

「ごめんっ!ホント、ごめん!悪ぃのは俺だからっ!」

謝る銀時に土方が戸惑うので、すまなそうに懐から取り出したのは例の飴のだった。

「沖田くんにアレを渡したのは俺です」

「なっ…」



屯所の副長室で正座をした銀時が説明する。

「知り合いからアレを貰って、お前に使うつもりだったんだけど万が一のことがあったら困るし、お宅の局長さんで試させてもらおうかなぁと思って、沖田くんに頼んだのにお妙は貰ってもいないって言うし、じゃあ飴はどこいったんだろうと思ってたら、お前が俺にくれるじゃん?びっくりしたけど、ホントにたまたまなのかと思ったら毎日くれちゃうし、このまま飴のおかげだと思わせて仲良くなってからいつか好きだって言おうと決めたのに、お前がすっげ可愛く笑うから我慢できなくて言っちゃったら断られるし、心配かけてホントマジで反省してます」

プルプルと体を震わせて土方は銀時を睨む。

「は、ハメたな…」

「ハメてないですぅ。ハメんのはこれから……痛っ」

全然反省してないことを言うので蹴り飛ばしてやったが力は入ってなかった。

説明に紛れ込んだ銀時の気持ち、それは自分がずっと押さえていたものと同じなのか、問い掛けることをためらう土方。

それを察して銀時は土方の前に正座しなおすと、改めて伝えた。

「だから飴とか関係なく…最初から好きなんですけど…」

土方はうつむいたまま銀時の前に座り、

「……それ、1つくれ」

そう言って手を差し出し、渡された飴を食べた。返事は決まっていたが、なにか切っ掛けが欲しかったのだ。

口に広がる甘さの助けを借り笑って返事を返す。

「…俺も…好きだ」

「すげー効き目だな」

銀時も嬉しそうに笑った。





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菓子系のアイテムネタは多いです。
たいがい沖田にだまされた土方の話……だな(笑)
土方だまされやすすぎて可愛いっ。



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