原作設定(補完)

□その3
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♯25

作成:2015/04/19
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副長室で土方は難しい顔をしていた。目の前には一つづつ包装された飴が入ってる袋。



30分前。

「土方さん、これ差し上げやす」

そう言って渡された袋は、パッケージの絵柄から見るに飴のようだったが、土方は明らかに警戒する顔をした。

パッケージの文字が天人製のものだったことと、渡した相手が沖田だったからだ。

「な、なんのつもりだ…」

「そいつぁ、なかなか仲良くなれない相手に食べさせると仲良くなれるってぇ品でさぁ」

「…なんでそんなもん…」

「近藤さんのために用意したんですがね、よくよく考えたら、あの姐さんが近藤さんからのプレゼントは食わないんじゃねーかって思いやして」

「んなこたねーだろ。飴ぐらい…」

「目の前で、7日間食って貰わないと効かないんでさぁ」

確かにそれは無理かもしれない、と戦友ながら酷い納得をする土方。

「…なんで俺だよ。こういうのはお前に似合いそうだろうが」

「分かってねーでさぁ、土方さん。なつかない相手には、言葉責めで言うこと利かせるのが楽しいんじゃねぇですか」

相変わらず歪んだ性格だ、と顔をしかめてからふと思い付いた。

「…総悟…」

袋を開けて飴を取り出すと、そっと差し出す。

「………やだなぁ。俺ぁ、土方さんのこと、もうこんなに大好きなんで効かねーですよ」

満面の笑顔でそう言われて、逆に怖い思いをしてしまった。



…という経緯の品だった。

疑いだしたらキリがないので、これが本物だと信じた上で土方は悩んでいた。

仲良くなりたい人、そう言われて真っ先に思い付いた奴がいたからだ。

銀髪天然パーマで死んだ魚のような目をした男。

自分でそう表現した男の、そうしゃない面を見せられて以来惹かれ続けている。

思い出しただけで頬が熱くなる所まできてしまったのに、未だに会えばいつの間にか喧嘩になってしまい、まともに会話もできないでいた。

この思いを伝えることができないなら、せめてもう少しぐらい仲良くなりたい。




翌日、街中で銀時に会った。もちろん偶然ではなく、比較的遭遇しやすい時間、場所を想定した上でのことだった。

「こんにちは、副長さん」

向こうから声をかけてくる。別に珍しいことではなく、割りと普通に挨拶はするのだが、

「てめーは今日も暇そうだな」

と返してしまうから喧嘩になるのだ。分かってるのに止められないでいたが、今日は手のひらに握られた飴が押し止めてくれた。

「おう………これ、食うか?」

いきなり過ぎるとは思ったが、上手く会話を続ける自信がないから仕方ない。

差し出された飴を受け取って銀時は驚いた顔をした。それはそうだろう、と思う。

「何の罠ですかコノヤロー。激辛か?マヨ味か?」

「た、たまたま持ってただけだ。味は……知らねー」

食べてないから本当に知らなかったが、不味いことはないだろう。7日間食べて貰わないとならないのだから。

「ま、いいけど。……ん、普通に美味い」

銀時はあっさりと口に放り込んだ。こういうとき甘いもの好きは助かる。

「ゴチ、土方くん」

そう言って銀時は立ち去り、土方はその場で大きく息を吐いた。これをあと6日。



翌日、時間を合わせて銀時に会うと、同じように声をかけてくる。内心すごくドキドキしながら土方は聞いた。

「昨日の飴、食うか?」

「おう」

小さく笑って手を出すから、飴を渡してやる。普通に笑うところを初めて見たな、と思った。



3日目。

「よく会うな。暇なの、副長さん」

「…たまたまだ。…やる」

「どうも」



5日目。

「毎日1個しか持ってないの?まとめてくれてもいいんだけど」

「ポケットに入れたら邪魔だし」

「ふ〜ん」



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