原作設定(補完)

□その3
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♯24

作成:2015/04/19




真選組屯所、夕方のミーティングが終わった後はそのまま雑談になったりする会議室。

部下の雑談に耳を傾けるのも副長の仕事だ、と煙草をふかしながら聞いていた土方だったが、話題が嫌なほうに向かっていて顔をしかめた。

「万事屋の旦那ってあんなぷらぷらしてんのになんでモテるんすかね」

土方と銀時の事はごく一部の人間しか知らないため、この場でこんな話題が出ても仕方がなかった。近くに沖田がいないのが幸いだ。

「かぶき町最強の男なんて言われてるくせにあの毒のなさが親しみやすいのかね」

「俺らがよく行く甘味屋の看板娘もファンらしいんすよ。旦那もよく来るらしいし、ショックっす」

「諦めろ。俺らが勝てんのは経済力だけだ。若い娘は金だけの男にはなびかないぞ」

土方はとくに意見することもなく次の煙草に火を着ける。

普段から女の影が多く、そのたびに「俺は多串くん一筋だからっ」と力説する銀時。気にしてない素振りで許しても本当に無関心なわけじゃない。

甘味屋の娘。隊士の間でここ最近では一番人気の娘だった。



休日で賑わう商店街。人混みに紛れるように土方は甘味屋で休憩をとっていた。

昨日今日のことだけに、我ながら情けないと思いながら看板娘をチラ見。

若くて可愛くて元気で明るい。強くて頑固な女ばかりに囲まれて苦労しているらしい銀時の回りにはいないタイプだ。

こんな娘にファンだって言われたらさすがに嬉しいんだろうな、と考えてしまう。

すると、背後で娘が叫んだ。

「銀さ〜ん!新商品があるんだけど試してかない〜?」

人混みの中でも目立つ銀髪。人の隙間から、その言葉に答えて嬉しそうに笑う銀時が見えた。

『…喜んでんじゃねー、クソ天パ…』

椅子に座ってる自分のことは見えないだろうと不愉快な顔で視線を反らした土方は、椅子に軽い衝撃を受けて顔を上げた。

「多串くんっ」

さっき見た笑顔のままの銀時が目の前に立っていた。

「サボりか?サボりですか?サボりなんですかコノヤロー」

「…休憩だ、バカ」

土方の反論に笑い、銀時は皿の上の団子を取り上げてパクリとくわえる。

「あ、てめ…」

「すぐ返すから待ってろ」

土方を引き止めるためにわざと横取りして、銀時は店内に入っていった。

この場には銀時の気を引くものがいくつもあった。看板娘に甘味。それよりも真っ先に土方に気が付き、真っ直ぐに土方に駆け寄ってきた。

『喜んでんじゃねーよ、俺っ』

顔が熱い。銀時が戻ってくるまえに冷まさないと余計に嬉しがらせりだけだ、と悔しい土方だった。




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銀さんにとっても土方はどこにいても見えるんだよ、と。
シチュ的には好きな話です。



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