原作設定(補完)
□その3
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♯23
作成:2015/04/19
パトカーの助手席で土方は目を閉じていた。
昨夜は、昼間に出たターミナルでのテロ予告に真選組総動員で警備していたが何も起きず、いたずらとは言い切れないために隊士の半数で一晩中周囲のパトロールが行われた。
土方に至ってはそれ以前も睡眠時間を削って仕事したのも重なり、助手席に乗っていただけとはいえ疲労困憊だった。
その時、車内の無線が鳴り、疲れてるときに聞きたくない声が聞こえてくる。
「お疲れさまです、土方さん」
「…」
「土方さ〜ん」
「…」
「起きろや、土方ぁ」
「…んだ、コラァ」
沖田にイラつくだけ無駄なのだが、あの生意気な顔を思い出すと無視もしたくなるのだ。
「近藤さんから連絡がありやして“スマイルで身包み剥がされて松平のとっつぁんとパンイチなんで迎えに来て欲しい”そうです」
「…なにやってんだあの人ら」
「帰り道に拾ってきてくだせぇ」
「あ!?俺はターミナルにいんだぞっ。屯所のほうが近いだろうがっ」
「パトカーが出払ってるんでさぁ」
「だったら近場のヤツに頼め」
「調べんの面倒くさい。この後非番だろ、行ってこいや土方ぁ」
「総悟っ!」
言いたいことは言ったのか無線は切れた。面倒くさい以前に、嫌がらせで連絡してきたに違いない。
「ったく」
「…あの…」
運転していた隊士が、どうすればいいのか戸惑っているので、
「回ってくれ」
そう言って深く溜め息をつき、背もたれに寄りかかり再び目をつぶる。
そうだ、久し振りの非番だ。
『帰ったら昼まで寝て……あいつ、暇かな。暇だろうな。たまには昼間からぷらぷらしてやるか…久し振りだしな。夜には酒でも飲んで、その後は………』
しばらく顔も見れていない恋人の姿を思い浮かべる。数回交わした電話の向こうで「会いたい」と囁かれた。その声が聞こえる気がして頬が熱くなるのを我慢した。
「副長、いました」
そう言われ、車が止まってから重たい目を開けて窓を下ろした。
「近藤さん、何やってんだ」
「トシ〜、すまね…」
パンイチの近藤と松平、そう聞いていたのに二人の向こうにある人影は、近藤を押し退けて顔を出す。
「多串くんっ」
「………」
銀時を見て、パンイチを見て、窓を閉めた。
松平、近藤が車に乗ったのを確認して、運転している隊士に命令する。
「出せ」
「トシ、まだ…」
「あと二人は乗れねー」
「でも…」
「じゃあ、代わりにあんたが降りろ」
「そうだなっ!じゃあな、万事屋、長谷川さん」
あっさりドアを閉めた近藤に隊士は素直にパトカーを発車させ、
「多串くんのケチぃぃぃいいい!!」
叫ぶ銀時の声が遠ざかる。
なんだよ、久し振りに会った好きなヤツの姿がパンイチって。百年の恋も冷めるってやつだろ。
「悪いなトシ。今日は非番だろ。出かけるのか?」
「明日まで寝る」
その日のおやつの時間、団子屋で堂々と休憩している沖田に愚痴る銀時。
「多串くんにパンイチのまま置いてかれちゃってさ」
「ああ、だから非番なのに屯所にいたんですねぇ」
「…非番なの!?」
本当に戻ってからずっと寝ていた土方は、鳴り出した携帯を手に取り万事屋からなので無視した。
留守番電話に切り替わらない設定にしていたので、ずっと鳴り続けるそれにしぶしぶ出ると、
「……んだよ」
「出ろやぁぁぁあああ」
怒り泣きのような叫びが聞こえてきた。
「うるせー、パンイチヤロー」
「おまっ、あの魔王に逆らえると思ってんですか!?つーか、お前んとこの大将だってパンイチだったろうがっ」
「近藤さんはパンイチなら上出来だ」
「パンイチ以下に慣れすぎだろ。…それより非番なんだろ、出てこいやっ」
「……チッ……」
「デートの誘いなのに舌打ちしたよこの子っ」
1時間後、土方は待ち合わせの場所に向かいながら少し気が沈んでいた。
朝もさっきの電話も、あんな会話しかできなかったのだからどんな顔して会えばいいんだろうか。
だが、土方の悩みはいつも物ともしない銀時。
「多串くんっ」
朝と同じように、久し振りに会う恋人に向ける満面の笑み。その素直さも愛情の深さも、土方には簡単には表せないものだ。それが悔しい。
銀時は、なんか複雑なこと考えてるんだろうなぁ、と思いながら土方の目元に指を滑らせる。
「隈残ってる。あのまま寝てたほうが良かったな」
暖かい指、言葉、思い。
それを面倒くさいだけの俺にも向けてくれるから、俺は…。
「…終わったら…朝まで寝れば大丈夫だ…」
土方に言える精一杯の素直な気持ちだったようで赤くなっているが、銀時には効果覿面、リミットゲージは一瞬で突破した。
「多串くんっ、可愛っ!!」
「その前に飯だな」
抱き付こうとしたのをサッと避けられてちょっと寂しい銀時だった。
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メモではオチは考えてなかったので、
書きながら考えたら土方が銀さんラブ!な話になりました。
イチゴパンツの下りも書きたかったけど、
この回はイチゴパンツじゃないんだもんよ(笑)