原作設定(補完)

□その2
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♯13

作成:2015/04/13 修正:2016/03/27
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「お祭り、行かね?」

そう言って銀時が出してきたのは、江戸でこの夏行われる祭りが全て掲載された情報ペーパー。

土方は表情を変えず答える。

「……無理だ」

「1日ぐらい休めねーの」

「……全部真選組にも警備依頼が来てる」

「……そっか。見つかったらマズイもんな」

銀時は納得して小さく笑いつつも、それは諦めきれない寂しさを含んでいた。

“誰にも言わず、誰にも見付からず”

誰にもバレないようにできるなら付き合ってもいい、と酷いことを言った土方に、それでもいい、と嬉しそうに笑って頷いた銀時。

『本当にそれでいいのか?お前は……俺は……』

自分で言ったことに囚われていたのは土方のほうだった。





祭りの警備中、土方はお妙に連れられた神楽と新八を見付けた。屋台の前で楽しそうに騒いでいる。

今日はここに近藤が来てなくて良かったな、と思いながら、銀時の姿がないことに気が付いた。

一緒に行動してるとは限らないが、結局、終わるまでにあの目立つ頭を見つけることはできなかった。





最後の夏祭り。

規模もあまり大きくないためお偉いさんが物見遊山に来ることもなく、このまま何事もなく終わりそうだな、と土方は息を付く。

見回した視線の先に、キョロキョロと辺りを伺いながら歩く二人連れを見付けた。不審者だと判別しなかったのは、それが顔見知りだったから。

向こうも土方に気づいて、警備本部が置かれたテントまで寄ってくる。

「こんばんは、みなさん」

「しっかり働いてっか、税金泥棒ども」

生意気を言う神楽に対する教育的指導より、やはり今日も姿のない奴のことのほうが口から出てしまった。

「……お前らの大将はどうした?」

「銀ちゃんはデートアル」

「へぇ、旦那もすみにおけねぇや」

きっぱりと明言した神楽に、沖田が意外そうに答え、土方は胸がチリッと痛む。“それ”の相手が自分じゃないからだ。

あれから銀時とちゃんと会えないままだった。怒っているのかとも思ったが、市中見廻りで顔を合わせたときは普通にしていた。

見回りは二人一組が原則だったため話しかけることもできず、祭りのことは諦めてくれたのかと思っていたがどうやらそうではないらしい。
土方の胸がもやもやしていることなど知らない三人が会話を続けた。

「待ち合わせしてるからって別行動なんですよ、毎回」

「毎回?」

「お祭り制覇するって言ってました」

「銀ちゃんばっかり旨いもん食ってズルイネ」

『だからこのあいだも一緒じゃなかったのか。組が警備してるの知ってるくせに。…俺たちのことを誰も知らねーんだから、俺にさえ見つからなきゃバレねーよな』

「そんな酔狂に付き合う物好きはどこのどいつでぃ」

「それが分からないんですよ。教えてくれないし、他で見かけたこともないし」

“誰にも言わず、誰にも見付からず”

ザワリと胸が騒ぐ。

「で、今日なら会えるかな〜と思って僕らも来てみたんですけどね…見つからなくて」

「きっとものっそブスアル!」

「僕はすごい美人なんじゃないかと思うんですよ」

「じゃなけりゃ、ホントは誰もいねーのかもなぁ」

「あ、俺もそう思う。あいつ見栄っ張りそうだもんなぁ」

新八と神楽を見つけてお妙がいるかと飛んできた近藤がガッカリしながらも、他人のモテナイ談義にさりげなく参加してきた。

金を持ってそうな連中が集まったからか、神楽がにやっと笑って、警官相手に提案する。

「賭けるアルか」

「乗った!俺が勝ったらお妙さんと結…」

「しばきますよ」

「私は屋台食い放題がいいアル!」

「それじゃ、俺が勝ったらてめーを殴り放題で」

「お前の貯金を空にしてやるネ」

神楽と沖田が火花を散らす中、近藤が土方にも話を振ってきた。

「トシはどれに賭ける?」

「……興味ねーよ」

「そんじゃ、旦那みかけたら連絡するよう隊士らに連絡しときまさぁ」

携帯のメールで一斉送信する沖田。仕事中に他の連中まで巻き込むようなことはするな、と言いたいが、近藤が乗り気なので黙っておくことにした。

土方の胸騒ぎも、銀時が現れたら解決する。来たら来たらで今度は別な痛みが湧くのだが。



あれから1時間。

「来ないアル」

「来ないですね」

「そりゃあ、相手がいなけりゃ来れねーよなぁ」

沖田がニヤニヤしながら余裕顔を見せるので、神楽は悔しそうだ。

土方は別な不安が募っていた。

『もしかして、あいつ…』

タバコを揉み消して、すまなそうな顔で近藤に頼む。

「近藤さん。ちょっと早いけど俺ぁ上がってもいいか?」

「あ?ああ、今日は何もなさそうだしなぁ。かまわねーよ」

「……近くにいるから何かあったら電話してくれ」

「おう」

トシが珍しいことを言い出したなぁ、と思いながら見送ると、沖田が口を尖らせる。

「あ〜、土方さんばっかりズリーや。俺も遊びてーよ」

「いや、お前はもういいだろ」

両手に屋台の菓子や玩具を持って誰よりもお祭りを堪能している部下に、複雑な近藤だった。





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