原作設定(補完)
□その47
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だが、握り拳を震わせて、
「あんの野郎ぉぉぉぉぉ! いっぺんガツンと言ってやらねーと……」
と言いつつ出て行こうとするので、肩を掴んで引き止める。
「いやいやいや、帰さねーし、なんも誤魔化せてねーから」
「……チッ……」
逃走を中止した土方は舌打ちをして、不機嫌MAXな表情でそっぽを向いた。
銀時にはなんとなく、それが半分は照れ隠しなのだと分かることができたので、事情を説明してもらうことにする。
「つーかさ、なんでこんなまどろっこしい真似をしたわけ? 普通に言えば良かったのに」
「…………無理だ」
「またまたぁ、そうやってやりもしないで諦めるのは良くありませんよ」
「…っ……じゃあ、てめーは俺にいきなり、"好きだ。付き合ってくれ"って言ったら付き合ったのかよ!」
「普通に嫌ですけど」
「そうだろうがぁぁぁ!!!」
即答する銀時に、土方は怒りとか悲しみとかをぐちゃまぜにした叫びを上げて、がっくりとしゃがみ込む。
それを見下ろして銀時は頭を掻いた。
だからあんな手段を取った。
断られると分かっていて、せめて一度だけでも、という気持ちであんな依頼をしに来た土方を思い出す。
泣いてはいないだろうけれど、うずくまったままの土方を見て銀時の胸もちくりと痛んだ。
よくよく考えれば、"一度だけ"と思った土方に、何度も"もう一度"と思ってしまうきっかけを与えたのは自分だった。
あの時、大金をウマウマと素直に受け取っておけば、多すぎるなんて返しに行かなければ、土方はあの一回で諦めたはずなのに。
まあそのおかげで気付いたこともあるけれど。
銀時は土方の隣にしゃがんで、顔を覗き込むようにして言ってやる。
「でも、まあ……一応、言ってみれば?」
「……何、言ってんだ……嫌なんだろうが……」
「んー、でも、万が一、もしかしてってことがあるかもしれねーじゃん?」
他人事のように言ったけれど、それは"銀時本人"の言葉だ。
"一度だけ"で終わらなかったことで変わる気持ちがあると、そう言っている。
ゆっくり顔を上げた土方と、目が合う前に銀時が反らした。
照れくさそうなその横顔に、土方はくしゃりと顔を歪ませてついさっき"お断り"されたばかりのセリフをもう一度繰り返す。
「……て、てめーが好きだ……俺と付き合ってくれ……」
抱かれるたびに何度も何度も言ってしまいたくなった言葉。
そのたびに何度も何度も拒絶されることを想像してしまい飲み込んだ言葉。
だが銀時は、"よくできました"という顔でにいっと笑った。
「いいよ」
土方は今度こそ涙が溢れそうになるのを、銀時にぎゅっと抱きつくことで誤魔化す。
そんな嬉しい気持ちを余所に、久しぶりの匂いと体温に銀時が呟くので、
「そんなにぎゅっとされると……ムラムラするんですけど」
「……もう、金は払わねーからな……」
土方は抱き締め返す銀時に擦り寄りながら、遠まわしの承諾をするのだった。
おわり
長くなったなぁ……そしてエロになると唐突に終わらせる。
原作でも"爛れた恋愛しかしたことがない"と言われてる銀さんですが、
あんな生き方なので、"普通の恋愛をしたことがない"っていう感じが好き。
ふぅ、ヘタレてない銀さんもいいなぁ。
と、満足な私でした。