原作設定(補完)
□その41
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「あー……沖田くんにさぁ、誕生日に何が欲しいか、なんて聞かれたからさー、団子って言ったらおごってくれてさー……」
土方の"知りたい心"を脅すようなことを言ったくせに、銀時は確信には触れずに事の始まりから話し始めた。
またはぐらかす気じゃねーだろーな、と土方が眉間にシワを寄せる。
「土方くんが忙しくてお茶しに来てくれないから久々の団子でさー、嬉しくてついつい口が滑ったんだよねー」
「……何を」
「……土方くんから何が欲しいか、って答えても答えてもしつこく聞くもんだから……長年の願望をつるりとね……」
「だから、それは何だ」
「それはー…………」
土方がイラつき始めるぐらい躊躇ったあと、銀時は言いにくそうに恥ずかしそうに言った。
「…………な……って、ほし……なー、って」
「あ?」
「……なま……よ……欲しいな……」
「聞えねーよ! はっきり言いやがれ!」
「名前で呼んで欲しい、って言ったんですよコノヤロー!」
叫んでから顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった銀時に、土方がぽかんとする。
さんざん焦らされて悩まされたのに、予想外すぎる答えが返ってきたものだ。
恥ずかしがる気持ちは分かる。
たぶん最初からこんなことを言われていたら、良い歳こいて何言ってんだてめー、と突っぱねたに違いない。
だが予想外すぎたために土方の感覚も麻痺しまっていた。
「……それ、だけか?」
「そ、それだけですぅぅぅ」
「ホントのホントにそれだけか?」
「ホントのホントにそれだけですぅぅぅ! もう言わせんな!」
銀時の様子から事実なのだと知り、土方はほっとして笑ってしまう。
「……なんだ……ソレだけか……」
そして銀時も土方の様子から、恥ずかしくて無謀が願望がそうでもないことを知った。
そーっと土方のほうを向いて伺う。
「……い、いいの?」
「名前、呼ぶだけだろうが」
「名字じゃないよ? 名前のほうだよ?」
「分かってるよっ」
そう何度も聞かれてしまうと土方のほうも恥ずかしくなってきてしまったが、銀時が期待に満ちた目で見つめているので後に引けそうにない。
期待に答えるためには、誕生日を祝うために訪問したときに言うべき最適なセリフがあった。
「……ぎ……」
「…………」
「……ぎ、ぎん……」
「頑張って、土方くん、頑張って」
簡単だと思ったのにイザ口にしようとしたら上手く言えない土方を、銀時がわくわくしながら応援してくれた。
土方がこうなるのを分かっていて銀時が言い出せなかった"欲しいもの"だ。
土方は大きく息を1つ吐いてから、改めて銀時を見る。
「……銀時、誕生日おめでとう」
言った途端に限界を超えた土方が真っ赤になってしまうので、
「ありがとう!!! 土方くん、可愛いぃぃぃ!!!」
もうたまらんと抱き締めてしまう銀時だった。
はぴば、銀さん。
おわり
ぐはっ、恥ずかしいぃぃぃ!!!
でも、銀さんが嬉しいなら、恥ずかしいのなんて我慢するよ!
土方が!
土方「俺かよ!」