学園設定(補完)
□同級生−その4
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そんな別れ方をしたせいで、十四郎は銀時と話をすることも一緒にいることもなかった。
このまま卒業してしまうのか、という不安な気持ちと、もうあんなヤツは放っておけ、という怒りが十四郎の中をぐるぐると回っている。
そんなとき、放課後、引退した部活に顔を出したあと、土方は忘れ物を取りに教室に戻ろうとしていた。
教室の中から聞きたい声、だけど聞きたくない声が聞えてきて足を止める。
「……なんだよ、桂」
「そういえば貴様、最近土方と一緒ではないんだな」
銀時と、高校に入る前から仲が良い桂の声だった。
自分の話になったので十四郎は動けずに二人の話を立ち聞きしてしまうことになり、
「ああ。別れたんです、僕たち」
「は? 土方ラブラブの貴様が? それともフラれたのか? それなら分かる」
「違いますぅぅ…………つーか、いずれそうなるから前もって別れた、的な?」
「? どういうことだ?」
「……テレビでさー、十四郎が行く予定の○○大学の特集やってたんだよねー」
「……テレビ?」
「すげーの、さすが都会っつーの? 女がみーーーーーーーんなものごっさ可愛いの!」
「…………女?」
「キラキラしてて垢抜けてて、田舎もんのチェリーボーイなんてイチコロ、って感じでさ」
「……ほう……で?」
「そんなところに十四郎が入学したら、すぐ彼女できちゃうんじゃん! 俺のことなんて忘れて彼女できちゃうじゃん! 俺なんてぽいぽいのぽーいじゃん!!」
「……………それで別れたのか?」
「そうだよ。会えなくて寂しい上に別れ話なんかされたら、俺、立ち直れねーもん」
「……貴様は、バ……」
「バカかてめーはぁぁぁぁぁ!!!!」
あまりにもバカバカしい話を聞かされて、そう叫んで二人の前に飛び出してしまった。
鬼の形相で教室に入ってきた十四郎に、2人は驚き、それから蒼白になる銀時と、立ち上がる桂。
「おお、そうだ。俺はこれから塾があったのだ。じゃあな、銀時」
「嘘つけぇぇぇ!!! お前、塾なんか……って早っ! 出て行くの早っ!!」
呼び止める間もなく桂が教室を出て行ってしまうと、銀時はプイッとそっぽを向いて椅子に座りなおした。
聞かれてしまったら仕方ない、という態度に、十四郎はズカズカと中に入ってきて銀時の向かいの机に両手を叩き付ける。
「てめー、マジで……んなくだらない原因が理由かよ」
「……くだらなくありませんんんん。お前、もともとその気はなかったんだから、都会の可愛い子に言い寄られたら心変わりするだろうが」
「……か……」
「あ?」
「アホか!!! 都会じゃなくても、この町の女たちだっててめーよりは可愛いわぁぁぁぁ!!!」
「…………えぇぇぇ!?」
予想外のキレ方をした十四郎に銀時はようやく情けない顔をした。
あんなに必死に、真剣に、真摯に、自分を口説いておいて、そんなことも分からないなんて。
怒っているつもりだったのに、きっと十四郎も情けない顔をしていたのだろう。
「……それでも、俺はてめーを選んだんだろうが! てめーに唆されて付き合ってた? 俺がそんなに単純なわけねーだろ!! 考えて考えて考えて……卒業しても……大人になってもてめーと一緒が良いと思ったから、だから……」
心の内をぶちまけている間に、銀時は情けない顔のまま近づいてきて
十四郎を抱き締める。
「ごめんっ、十四郎っ……ごめん……」
こんなに想われているなんて思ってもいなかった。
将来のことまで考えてくれるぐらい、大事にされていると思わなかった。
いつもふざけている銀時が、今日は本気で謝っているのが分かるから、理由はバカだったけれど真剣に考えてのことだと分かるから、十四郎は許すしかないのだ。
銀時に擦り寄って言ってやる。
「……分かったら大人しく俺が帰ってくるの待ってろ」
「……うん……十四郎は都会のカワイコちゃんに言い寄られても心変わりしねーよな」
「…………それはわからねえ」
素っ気無く答えた十四郎に、今度こそ銀時は顔色を変えてうろたえた。
「ちょっ!!? 俺が一番なんじゃねーの!?」
「言い寄られてみねーとわからねーだろ」
「……そ、そっちが良くなっちゃったら?」
「諦めろ」
「やっぱり今、別れるぅぅぅぅ!!!」
「はははっ」
楽しそうに笑う土方が、銀時は悔しいけどやっぱり可愛いので別れたくないな、と思うのだった。
おわり
どうもうちの銀時はバカっぽくて…………可愛いよね(笑)
土方が銀さんを好きで好きで仕方ないのが、書いてても嬉しいのでした。