原作設定(補完)
□その33
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#330
作成:2017/12/26
しんと静まり返った屯所・副長室。
珍しく日付が変わる前に布団に入って眠っていた土方は、みしっと小さく畳みの鳴る音に目を覚ます。
真っ暗な部屋に人の気配が有った。
ここまで接近されてしまったことを不覚に思いながら、布団からそーっと傍らの愛刀に伸ばした手を、がしっと止められ、耳元で囁くような声が聞える。
「メリークリスマス、多串くん」
聞き覚えのありすぎるその声に、土方は安堵しながら呆れた声で言い返す。
「何がメリークリスマスだ。もう26日だぞ」
「だってさぁ、今年はなんか? サプライズサンタが流行ってるとかで、万事屋さん大忙しだったんですぅぅぅ」
そういえば昼飯時のバラエティで見たような気がするな、と土方は思い出す。
彼氏でもお父さんでもないサンタクロースが子供達を喜ばせている映像だった。
「…ふーん…」
「俺は寒いから嫌だって言ったんだけど、ギャラが良いからって新八と神楽と、おまけに定春までノリノリで大盛況でした」
本当ならチヤホヤされるはずの子供たちが、怠惰な大人を引っ張って働いていたのかと思うと、鬼の目にも涙が浮かびそうだった。
まあ、そんなことなら24,25日と現われなかったのは納得がいく。
それにしても……
「……んな目立つ格好で、どうやってここまで入ってきた」
「コッソリと? おたくの警備、ちょっと緩いんじゃないんですか」
「…………分かった。今晩の当番は減給だ」
「ちょっ……それはちょっと可哀想じゃね? 銀さんが優秀なだけで見張りの子には罪はねーだろ」
金で苦労している銀時がそう言うので、土方は小さく溜め息をつく。
銀時が本気になれば隊士をいくら配置したとこで、きっと副長室に潜入できるだろう。
それと同時に子供っぽいことも言うのだ。
「それに、恋人がサンタクロースしに忍び込むから見張りは手薄にしておいて、って言ったじゃん」
「……てめーのために、そんなことできるわけねーだろ」
「ちぇっ…………ま、見張りがいようがいまいが会いにくるけどね」
にいっと笑う銀時に、土方は内心で嬉しく思いながらも冷酷なことを言った。
「それじゃあ、気が済んだら帰れ」
「えっ!? せっかく忍び込んだのにイチャイチャなし!? クリスマスなのに!?」
「"せっかく"も"クリスマス"も関係ねぇ。明日は朝早いんだよ。大人しく帰らねーと……」
「……ねーと?」
「休みなしで仕事するぞ」
仕事で忙しく会える時間がなかなか作れない土方だからこその脅し文句だったが、銀時には効果覿面だった。
「!!!? それじゃなくてもドタキャンが多いのに!?」
「だから帰れ」
「…………はぁい」
しょんぼりしたサンタはトボトボと副長室を出て行った。
その寂しそうな背中を見送り、土方は溜め息を一つついて目を閉じる。
「だ、旦那!? なんですか、その格好は……っていうか、また忍び込んだんですかっ」
帰り道なので見つかってもいいや、とばかりに逃げ隠れもせず屯所内を歩いていた銀時を、山崎が見つけて慌てて駆け寄ってくる。
「うるせー、ジミー。見りゃ分かるだろ」
機嫌の悪い銀時だったが、理由は明白なので山崎は別に気にしなかった。
しょんぼり帰ろうとしているということは、土方に追い出されたということだから。
それよりも気になることがあったので聞いてみる。
「というか、クリスマスですか? つまり24日には来てなかったってことなんですね」
「……だからなんだよ」
「いえ、副長に、"今日は銀髪のサンタが来るかもしれねーから見逃してやれ"って24日に言われてたんで…………って、もう居ねーよ」
言い終わる前に目の前から銀時は姿を消し、遠くのほう、おそらく副長室からギャーギャーと騒ぐ声が聞えてきたが、まあいいか、と山崎はその場を離れるのだった。
メリークリスマス!
おわり
過ぎたけどね!
土方さん、ちゃんとケーキとか買って待ってたりしたら、なお可愛いと思います。
コンビニで買ったホールケーキとかね。
「来ねーじゃねーか、クソ天パサンタめ」
とか言いながらマヨかけて食べたり……可哀想(笑)