原作設定(補完)

□その29
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#281

作成:2017/05/25




神楽は散歩、銀時はお登勢に呼ばれて雑用をさせられている間、新八は万事屋の掃除をしていた。

仕事がないと掃除ぐらいしかやることがないので、今日はいつもやらないような所を片付けていたら、見慣れない一冊の通帳が出てきた。

名前は銀時になっているが、万事屋の一切の雑務を預かる新八としては確認せねばと中身を見る。

古い使用済みの通帳かと思ったのだが、使用中の割と最近の日付までの微妙な金額の出し入れが記載されていた。

万事屋の収支のための通帳は新八が預かっているし、それは依頼と合わせてもちゃんと管理している。

ということは、この通帳はそれ以外の、銀時の個人的なものだということ。

隠してあったことからみても、給料も家賃も払わないくせにへそくりしてるのか、と怪しんだとき、背後から声が掛けられた。

「どうした?」

「うわっ……ひ、土方さんっ」

「声をかけても返事がねーから勝手に上がらせてもらったぞ」

私腹姿ということは非番で遊びに来たのだろう。

真選組副長の土方がプライベートで万事屋に出入りするようになった理由は、銀時と土方の二人から報告された。

付き合うことになったと聞かされたときはものすごく驚いたものだが、人はわりと簡単に順応するものである。

「それが……こんなもの見つけまして……」

一人で秘密を抱えるのは性に合わないので、フォロ方十四フォローさんならいいかと相談してみることにした。

土方も言われて通帳を確認してみるが、驚くほどの大金が出入りしているわけでもないし、これがどうした?という顔をしている。

なので新八は万事屋の財政状態を簡単に説明した上で話を進めた。

「ときどきお金が全然ないはずなのに米とか買ってくるんですよね。土方さんが買ってくれたんだと思ってました」

「……そ、そんなことするわけねーだろ」

どもって目を逸らしたところを見ると、少なからず買ってくれたことがあるらしい。

そうやって甘やかすから銀時がまるでだめなおっさんになってしまうのだが、それで自分も食いつないでいることを考えると新八も文句は言えなかった。

「内緒でバイトでもしたんじゃねーか」

「内緒で?」

「…ねーな。これ見よがしに威張るよな」

「“控えおろう”ぐらいやりますよ」

その様子が目に浮かぶようだったので、銀時の“社長としての責任感”はきっぱりと却下した。

となると他に稼ぐ方法と言えば……。

「パチンコで当たった」

「そのときは上機嫌で飲みに行くので分かります」

「……だな。だったら、昔からやってる定期的な仕事とか……」

「……聞いた覚えはないです。それに、自分で稼いだにしては家を開けることがないんですよね」

いつも神楽か新八が一緒にいる。

もちろんふらりと銀時が出かけた先のことをすべて把握しているわけではないが、最初のころはともかく、今はちゃんと出先を告げていってくれるし、それに嘘があるような素振りはない。

土方と付き合うようになってから神楽が夜に居ないこともあったが、そのときは当然土方が一緒に居るのだ。

子供たちや土方にも内緒にしなければならない金、そしてそれを稼ぐ方法とは。

人生経験が多い分、土方の脳裏に嫌な考えが浮かんだ。

土方と付き合うようになってそれなりの関係であるとはいえ、仕事仕事で会う時間がままならない。

へたするとひと月以上ほったらかしというときもあるわけで、その間、“そういう欲求”はどう処理しているのだろうか。

銀時は仕事なんだから仕方ないと責めることもなかったが、金と欲求不満の両方を解決するような仕事でもしてるんじゃないかと、土方は考えてしまった。

そのとき、良いタイミングというか、悪いタイミングというか、

「ただいま帰りましたよ〜」

呑気な声で銀時が帰ってきて、土方と新八は通帳のわけを聞き出してやろうと決意した。


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