学園設定(補完)
□逆3Z−その3
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#28
作成:2016/09/14
新卒ホヤホヤ教師1年目の土方十四郎は、校舎の外へ向かって歩いていた。
彼にはここに赴任してきてからずっと悩んでいることがった。
『……煙草……煙草が吸いてぇぇぇ!!』
割と自由な校風の学校だったが、法律に抵触することにはかなり厳しく、特に土方を悩ませているのが喫煙だ。
生徒はもちろん、教師といえど“生徒の出入りする場所で喫煙禁止”が言い渡されていた。
職員室は当然ダメ、食堂もダメ、休憩室もダメ、喫煙所は最初から無い。
唯一暗黙の了解となっているのが教科室だったが、同じように肩身の狭い思いをしている先輩教師たちと同席するには愛嬌が足りなかった。
一人で落ち着いて煙草を吸える場所がないかと思っていたとき、学校の南側に群生しているツツジの木を見つけ、空き時間にこっそり来てみた。
花はまだだが緑の葉っぱが生い茂り、煙草を吸う人間を隠してくれそうな雰囲気だ。
『……なんでこんな高校生みたいなマネを……』
情けないと思いつつ、初めての教師生活で溜まるストレスを煙草と一緒に吐き出したかった。
このあたりでいいかな、と木の間を抜け足を踏み出したとき、ぶにゅっとした感触と、
「いったぁぁぁぁぁっ!!」
という叫び声。
誰かを踏んでしまったんだとすぐに気付き、引いた足の靴跡を付けた手がそこにはあった。
「わ、悪いっ、大丈夫かっ!?」
慌てて隣に膝をついたら、週刊少年ジャンプを顔に乗せて寝ていた、この学校の制服を着た男子が身体を起こした。
それを見て土方は一瞬ぎょっとする。
何が起こったか分からないというとぼけた顔をした男子の髪は銀色だったからだ。
いくら自由な校風とはいえこれはどうだろうと見つめる土方と、痛む手を交互に見て男子はぽつり。
「……ああ……踏まれたのかぁ」
「すまん。気付かなくて……」
「いえいえ。こんなとこで寝てた俺も悪いんで、気にしないでください」
見かけによらずフレンドリーで丁寧にそう言った男子に、土方はホッとしてしまってあることに気付くのが遅れた。
今はまだ授業中だ。
「…というか、お前授業は?」
真剣な顔で聞かれて、男子はてへっと笑う。カワイコぶっているがいまいち似合ってない。
「寝坊しちゃって……途中で教室入ったら目立つから、休み時間まで時間潰し」
こんな目立つ髪をしてるやつに「目立つのが嫌」的なことを言われると微妙な気がする。
ちょっと眉間にシワを寄せた土方に、今度は男子のほうが聞いてきた。
「…先生、だよね? 見たことないけど……」
新卒とはいえ、そう言われるのには理由があった。
この学校はかなり大きな学校で、1年、2年、3年と校舎が別で、職員室も体育館もグラウンドさえ別々。
なので土方がこの目立つ銀髪を見たことがないように、男子のほうも土方を知らなくても仕方ない。
「…1年の土方だ」
「俺は3年の坂田銀時でぇす」
ぺこりと頭を下げられたので、土方もつられて頭を下げたが、
「で? 土方せんせーはこんなとこで何してんの?」
いきなり訊ねられて言葉に詰まった。
煙草を吸うために生徒の居ない場所を探していたのに、ばっちり遭遇してしまったのではとても吸えそうにない。
「……いや、それは……」
「せんせーも昼寝?」
「昼寝には早いだろ」
「じゃあ、覗き?」
「何を覗くんだよ……っていうか、覗かない!」
からかわれてると分かって土方が退散しようと思ったとき、
「なんちゃって。煙草吸いに来たんでしょ?」
そう言って坂田は土方が座れるぐらいのスペースを空けてくれた。
3年生ともなるとそのあたりお見通しのようで、切羽詰っているだけに否定して新たに場所を探すのもツライ。
せっかく隣を空けてくれたので、まあいいかとそこに座った。
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