原作設定(補完)

□その25
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風呂場で十四郎は、いろんな意味でドキドキしながら丹念に身体を洗い上げる。

酒が入ってないせいか、久し振りとはいえ何度もしてきたことなのに、気恥ずかしくて仕方がない。

銀時が待ってると思えばのんびりしていられないのだが、ついつい念入りになってしまった。

急いで風呂を出て部屋に戻りながら、“ダメなほう”の想像ばかりしてしまう。

銀時は和室に入らずテレビを見てるかもしれない。十四郎の分の布団を敷いてしまってるかもしれない。それで知らん振りで寝たフリしているかもしれない。

なんて考えてしまったがテレビの前には誰も居らず、半分開いたままの和室を覗くと“ちゃんと”そのままになっていた。

布団の上に座った銀時が、不安の残ったほっとした顔をしている十四郎を見て小さく笑う。

それが悔しくて、緊張しているなんて思われたくなくて、十四郎は勢いをつけて中に入ると、銀時の前にぼふんと座った。

ここまでしたのだから断らないで欲しいという願いも含んでいる。

その内心の切実さを感じたのか、銀時は何も言わず十四郎の頬に触れた。

確かめるように撫でるように触れる手の温かさは昔と同じで、胸がきゅーっと苦しくなって目を閉じた十四郎に銀時は唇を重ねた。

最近になってようやくしてくれるようになった触れるだけのキスじゃないことに、十四郎は思わずしがみつくように抱き締める。

そのままゆっくりと背中に布団を感じて体が熱くなった。

ずっとこうしたかったと思ってきた十四郎だったが、キスの先のリアクションがなくて、ゆっくりと目をあけて銀時を見た。

見下ろす銀時の表情には躊躇いと不安が混じっている。

「……ぎ……」

「いいのか?」

「あ?」

今更何を確認してるんだと十四郎は思ったが、銀時が聞きたかったのはもっと深い意味のこと。

「いいのか、俺で?こんなおっさんと付き合わなくても、お前は他の誰とでもやり直せるんだぞ」

そう言われて、十四郎は銀時が迷っていることを初めて知った。

自分が子供だから何もしなかったわけじゃないのだと。

生まれ変わって昔の記憶に縛られている自分を哀れんでいるのかと思ったら、十四郎は悲しくてイラついて怒鳴ってしまっていた。

「バカか、てめーはっ!!!物心ついたときからてめーのことだけ考えてきたのに、なんで他の誰かとやり直さなきゃならねーんだっ!!!」

それが“縛られている”と言うことなのかもしれない。

だけどそれを嫌だと思ったこともないし、今度こそ銀時との“夢”を叶えてやろうと願ってきた。

そして、本気で怒っている十四郎に銀時は苦笑する。

十四郎が側にいてくれることは嬉しかったけれど、子供から大人へ成長していくのを見守っているうちに湧いてくる父性愛みたいなもの。

それが“本当に自分でいいのか”と問いかけてきてしまったのだ。

それはきっとこれからも消えない疑問だろうけれど、今は真っ直ぐに自分に向かってくる気持ちを受け取ることにした。

まだ文句を言いたそうな十四郎の口を塞ぐ。

長く熱い“恋人同士”のキスをして、まだまだ華奢な身体を抱き締めた。

急に本気を出した銀時に十四郎は顔を真っ赤にしながら眉間にシワを寄せるので、先手で謝る。

「ごめん」

本当に悪かったと思っている顔をしているから、十四郎も怒るのはやめて、

「今度こそ、てめーが死ぬとき俺がキスしてやるんだからな。忘れんなよコラァ」

先の長い約束をしてやった。

10年前の冗談まじりの約束は、死にゆく“土方十四郎”を銀時に結び付け、迷いなく隣に戻ってこさせてくれた。

だから新しい約束で、それがずっとずっと続くことを証明してやりたい。

真剣な顔の十四郎に、きっと今度も約束を守ってくれるんだろうと、嬉しそうに笑う銀時だった。



 おわり



終わりましたぁ。なんとか、イチャイチャまで辿り着けたぁ。
この程度のイチャイチャでしたが、細かく書こうとするとけっこう大変なものです。
イチャイチャを書くスキルがないからね(笑)
始めは土方が死ぬところだけ思いついた話だったのに、いろいろ付け加えてハッピーエンドまで持っていけて良かった。
説明文が少なすぎてみなさんは感情移入できなかったかもしれないと思いつつ、私はすっきりしました(笑)

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