原作設定(補完)

□その23
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水曜日の午後、待ち合わせの場所に現われた銀時はうきうきそわそわしている様子だった。

沖田からの情報を聞いてから、土方もできるだけのことはした。

デートの場所を変更しようと、映画に誘ってみたりケーキバイキングに誘ってみたりしたのだが、どうしても神社に行きたいらしい。

それが自分と両想いになるためなのかと思うと、それ以上無理は言えなくなってしまった。

「そんじゃ、行こうぜ」

すぐさま神社に向かおうとする銀時に、一応無駄な足掻きをしてみる。

「お、お前、飯は食ったのか?」

「え? 昼は食ったけど……腹減ったの?」

「あ、ああ。何か食わねーか?」

酒でも飲めれば酔わせて気をそらすこともできるのだが、せめて寄り道させようと提案してみたのに、

「だったら、神社の向こうにマヨ料理を出す店があるらしーんだよ。夕食に行こうかと思ってたんだけど、神社寄ってからすぐ行くか」

なんてことを言われてしまった。

「マヨ!」

土方が興味を示したので銀時は嬉しそうに笑う。しまった、と思ったがもう遅い。

銀時が神社に向かって歩き出したので、土方も足取り重く着いて行った。

平日の昼間のせいか人通りは少なめだったが、カップル未満と思われる男女が歩いている。

その中を男二人で歩いているのはかなり浮いているが、銀時はそんなこと気にしないし、土方はそれどころじゃなかった。

『このままじゃ、コイツと上手くいかないかもしれねぇ……』

せっかく付き合えるのに、としょんぼりしながら何か手はないかと考える土方だったが、思っていたより神社は近かったようだ。

「ここだ」

そう言われて顔を上げた土方は、割と古びているけれど重厚な佇まいの神社にゾクリと身震いする。

霊験あらたかとでもいうのか、本当に“効果”があるような気がして土方は動けなくなった。

「…や、やっぱり先に飯にしねーか?」

「え? 終わってからでもよくね?」

「俺、すげー腹減ったし……」

「すぐだからさ、先に寄って行っちゃおうぜ」

珍しく我が儘を言う土方に、銀時がその手を取ろうとしたのを振り払ってしまう。

「土方くん?」

「い、行くのやめよう」

「ええっ、なんでっ!?」

急にそんなことを言われて銀時が驚きながらもがっかりしている気がして、土方はとうとう胸の内を白状してしまった。

「だ、だって…………両想いの二人が行くと別れるんだぞ!行っちゃダメだろうがっ!!」

土方はそう叫んで胸がぎゅーっと苦しくなったのに、銀時はきょとんとマヌケな顔をしている。

「え? 何それ? 御利益が本当か色々調べたけど、そんな話出てこなかったよ。誰から聞いたの?」

「総悟が………ハッ!」

我に返った土方は、話の出所が沖田だった場合の“オチ”にようやく思考が辿り着いた。

「……また騙されたんだ……」

『総悟ぉぉぉ』

銀時が呆れたような顔をしているので、土方は沖田に怒りを向けながらも落ち込んでしまう。

沖田の嘘に騙されてしまう自分が情けないと思ってはいるのだが、沖田のほうも土方が騙されそうな言い方、内容を心得ているのでどうしようもない。

同じドSとして沖田の気持ちがちょっと分かる銀時は、土方がものすごくしょんぼりしているのを見て小さく笑い、

「んー、じゃあ、まあ……飯にすっか」

そう言って神社に向かっていた足をマヨの店に向けた。

歩き出す銀時に、“嘘”だと分かったんだから神社に行けるのに、と土方が戸惑うと、

「…行かねーのか?」

「……行かなくてもいいみてーだし。“別れたくない”から行きたくなかったんだろ?」

振り返った銀時はにいっと笑った。

そう思ってくれたことで銀時の“付き合いたい”という願いは叶っていたことになるからだ。

ご機嫌になる銀時に、土方はついつい自分の気持ちを白状してしまっていたこと気付いて顔が赤くなる。

「お、俺はまだ何も言ってねぇぇ!」

「はいはい」

照れ隠しで反論してみたが銀時に嬉々として流されてしまったので不満そうな顔をしながらも、銀時からの片想いを満喫していたときとは別の“幸せ”な気持ちに包まれる土方だった。



 おわり



沖田くんに騙されたり振り回されたりするあの子が可愛いと思います。
……というだけ話だったのに、無駄に長くなりましたね。

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