原作設定(補完)

□その22
22ページ/22ページ



結局土方には遭遇できず、万事屋に戻ってきた銀時は椅子にもたれて大きな溜め息をつく。

沖田に色々ぶっちゃけてしまったことで、さらに心を固めることができたような気がした。

「……電話してみるかなぁ……」

先ほど“今、真選組は割と暇”という情報を得たばかりなので、土方が少しぐらい仕事を抜けても大丈夫かもしれない。

付き合ってひと月ほど経つがデートらしいデートもしてこなかったせいで、電話をする、程度のことも緊張しながら受話器を取ろうとしたとき、玄関のチャイムが鳴った。

新八たちが居ないので仕方なく応対に出ると、そこには正に今電話しようとした相手が立っていた。

「…土方?…」

外は陽が沈みかけ薄暗くなってきたのと、俯いているせいで表情が見えないが、様子がおかしい。

もう一度呼びかけようとしたとき、土方が暗い声で呟く。

「……総悟に聞いた……」

「!!」

沖田にぶっちゃけた後、“土方に言ってやろうか?”という彼からの提案を丁重に繰り返しお断りしたというのに、まんまと言われてしまったらしい。

まあ、あの沖田のことだから、土方の動揺する顔が見たくてチクられてしまうんじゃないかと、ちょっと考えてはいた。

なのでバレたときの“決めセリフ”まで用意してはいたのだが、

「……あー……だったら……」

「分かってる」

「あ?」

「勘違いして俺なんかと付き合わせて悪かった。全部無かったことにしてやるから、てめーも忘れろ」

俯き加減のまま冷たく土方にそう言われ、予想していた反応とはまったく違うソレに銀時はぎょっとする。

「ええぇぇ!? ちょっ……お、沖田くんに聞いたんじゃないの!?」

「聞いたから来たんだろうがっ!あの告白は罰ゲームでてめーにはその気が無かったんだろ!?」

「そ、それだけっ!?」

「まだ他にも何かあんのかっ!!」

ようやく顔を上げた土方は、口調は怒っているのに目は泣きそうだった。

沖田に“何をされた”のか気付いた銀時は、この状況が耐え切れずに帰ろうとする土方の腕を掴む。

「ちょっ、待ってぇぇ!!沖田くんの話には続きがあるんですぅぅ!」

「聞きたくねぇ!!」

「聞いてください!お願いします!300円上げるから!!」

銀時の必死な声と引き止める熱い手に、土方は胸を締め付けられた。

銀時のほうから告白されて付き合い始めたのにずっと一線引かれているような気がしていたのが、気のせいじゃないことを沖田からの話で知った。

騙されていたのが悔しくて、勘違いしたのが恥ずかしくて、嘘だったことが悲しくて。

一刻も早くなかったことにしようと自分から決着をつけに来たのに、引き止められていることが嬉しかった。

抵抗するのを止めた土方が、

「……300円欲しいから聞いてやる……」

そう照れくさそうに言ってくれたので、銀時はその言い訳さえも愛おしそうに笑う。



++


訝しげに声をかけてくる沖田に、銀時は頭をポリポリ掻いた。

「そいつぁ遠慮しとくわ」

「……その気もねーのに土方さんとのこと続けるつもりってことですかぃ?」

「……その気は……あるしぃ……」

モジモジしだす銀時に、沖田が眉を寄せる。

納得してなさそうなその顔に、銀時は仕方なく説明してやった。

「土方ってさぁ……屯所でもあんな感じ?」

「あんな?」

「怒ってるとこばっかり見てたからさ、素直じゃなくてツンデレタイプなのかなぁって思ってたのに……なんか、意外と笑うし優しいしノリもいいし、可愛いところ次々に見せられちゃってこのまま付き合っちゃってもいいかなぁ……なんて思うようになっちゃったわけで……」

ぶっちゃける銀時に、沖田は今度こそ本当に呆れた顔をした。

「つまり、“罰ゲームだった”ほうを無かったことにしてーと……」

「うん。そのほうが土方も幸せじゃね?」

本当のことを言って悲しませることもないし、銀時としては名案だったのである。

溜め息をつく沖田に、

「だから言わなくていいから。このまま土方の希望通りにラブラブになろうと思うので安心してくださいっ」

そう念を押したら、毛ほども興味がありません、という目で見られた。

「別に最初から心配なんてしてねーんで、勝手にやってくだせぇ」

そして注文した団子を口にくわえると、手をぴらぴらっと振って沖田は帰って行った。


+++



「……というわけです」

洗いざらい白状して怒られるのを覚悟して項垂れていた銀時だったが、何も言わない土方に顔を上げると、土方は複雑な表情をしていた。

顔は真っ赤で口も眉間もVの字にして、微妙な感じに泣きそうな顔。

なんて答えたらいいのか分からないような顔をだったので、銀時は改めて言ってやった。

「好きです、俺と付き合ってください」

内心ドキドキヒヤヒヤしながらの告白だったのに、土方はプイッとそっぽを向いてしまう。

やっぱり怒っているのかと思ったら、

「……分かった。付き合ってやる……」

土方のほうもモジモジしながら、改めて返事をくれたのだった。



 おわり



仕事中に考えた話だったので、細かいところが思い出せないまま終わってしまいました。
もうちょっといろいろ書きたかったような……気がする。
周りに振り回されてグダグダになる銀土が好きです(笑)

次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ