原作設定(補完)
□その22
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#211
作成:2016/07/19
割と決死の覚悟だったんだ。
「俺な……おめーのこと割とマジで好き…みてーなんだけど」
なのに、
「あ?気持ちわりーこと言ってんじゃねーよ、この腐れ天パー」
って酷くね?
金も権力もイケてるツラも持ってるからって、告白してきたいたいけな男にそんなひでーこと言えるか?普通。
まさしく鬼だよ、鬼。
なんであんなヤツを好きだと思ったりしたんだか、自分が情けなくなる。
あんなヤツもう……あんなヤツ……。
「銀ちゃん、暗いアル」
椅子にずり落ちそうなぐらい深く座った銀時の頭上に、真昼間だというのに暗雲が立ち込めている……ように見えた。
「……んなことねーですよ、銀さんはいつだって元気ハツラツだかんね……」
そう答えている声さえも暗くて、新八は机の上にドンといちご牛乳を置いた。
「暗いです。何かあったんですか?」
「……」
いつの間にか“餌で釣る”なんてこしゃくなことを覚えたガキ共に、憮然としながらも銀時はパックを手に取る。
「……別にたいしたことじゃねーよ」
「嘘アル!銀ちゃんが“たいしたことない”ことで二週間も悩むわけないアル!」
どうやらあれから二週間も過ぎていたらしい。
たかが男にフラれたぐらいでそんなに落ち込んでいた自分に、更に落ち込んだ。
こんなことをガキ共に相談するなんて情けなくもあるが、黙って溜め込んでいるのが悪いのかもしれない、と銀時は思った。
「……俺だって失恋すりゃーそんぐらい悩むんですぅ……」
「銀さん、失恋したんですかっ!!?」
「誰アルか!!!?」
さすがに相手が土方だと知ったら思春期のガキ共には複雑だろうと、そこは誤魔化してみたが、
「……誰だっていーだろーが」
「言うアル!白状するアル!!さっさと教えるアル!!!」
普段色気より食い気でもさすが女、なのか、思いのほか食い付いてきた神楽に、襟首を掴んでがっくんがっくん揺さぶられて生命の危機を感じた銀時は、結局言わされてしまうのである。
「…ひ、土方くん、です…」
「…………土方さんっ!!?」
「銀ちゃん、マヨラが好きだったアルか!? 今流行のBLってヤツネ!!」
オタク事情に詳しい新八と、割と女友達の多かったりスマイルに出入りしていて女の流行モノに詳しい神楽は、理解が早かった。
「へぇぇぇ、銀さんが土方さんを〜」
「趣味悪いアル〜〜」
物珍しいモノを見るような目で見られてはいるが、嫌がってはいないようだ。
「……おかしいかよ」
「いえ。でも普段喧嘩ばっかりだったのに意外です」
確かに新八たちの前では、会うたびに喧々囂々に睨み合って口喧嘩ばかりしていた。
「二人で居るときはそうでもなかったからね。銀さんマゾじゃないし」
「へー」
「団子屋で会ったとき30回ぐらいねだれば舌打ちしながら団子買ってくれたし、居酒屋で会ったときもマヨ(徳用)を出せば一緒に飲んでくれたし、町で偶然会ったときも眉間にシワを寄せた土方くんと必ず目が合うし」
土方との思い出を数々聞かせてやったのに、新八と神楽は表情を曇らせた。
「……銀さん……告白するならせめて好意を持ってくれてる人にしないと……」
「あ?当たり前だろ。だから土方くんに……」
「無いアル。むしろ嫌われてるんじゃねーアルか?」
「神楽ちゃんっ、そんなはっきり言っちゃ銀さんが可哀想だよ」
「ヘタな優しさがさらに銀ちゃんを傷つけるネ!だからお前は新八なんだよ」
「新八関係ねーだろぉぉぉ!!」
喧嘩をしだす二人を無視して、銀時は苦悩していた。
『あれ?割と仲良くなれたと思ってたんだけど、もしかして俺の勘違い?アイツも照れ隠しで無愛想になってたんじゃなくて、本当に嫌がってた!?』
しぶしぶという顔をしながらも一緒に居てくれたし、割と楽しそうに笑ってくれていたような気がして、それが可愛くて好きだと思ったのに。
本気で嫌がっていたのだとしたら、あんな断り方をされたのも納得がいく。
新八と神楽に相談してすっきりしたかったのに、余計に塞ぎこんでしまう銀時だった。
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