原作設定(補完)

□その20
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「無様アルな」

その声にバッチリと目を開けると、神楽と新八が土方を覗き込んでいた。

「な、ななな、何してんだっ」

「沖田さんから招待状貰ったんです。今朝届けに来てくれて」

「しかたねーから祝ってやるアル」

屯所内だけならともかく一般人にまで何配ってんだ、と怒れる土方の前に山盛りのご飯が差し出された。

「私からの“卵かけご飯、ごはんですよ合いがけ、酢昆布乗せ”ネ。ありがたく食うアル」

「え…いらな……ムゴ、フガッ……」

口の中に広がる卵と甘辛い海苔と酸っぱい昆布の味は、得も言われぬほど不味かった。

が、体は縛られたままで強引に口に突っ込まれるので飲み込むしかなく、全部食べさせて満足そうな神楽に続き新八が、

「じゃあ僕からはお通ちゃんの歌を……」

『お通……あの変な曲か……まぁ、あれぐらいなら…』

「歌いますっ!」

「……あ? ちょ、まっ……」

マイクを取り出し土方が止める間もなくアカペラで歌い始めた。

「お前の母ちゃん何人だぁぁぁ!!」

スピーカーがあるわけじゃないのでマイクは気分的なものだったが、新八の破壊的超歌声は屯所中に響き渡る。

神楽はちゃっかり耳栓をしてそ知らぬ顔をしているが、土方は両手を縛られていて当然耳も塞げない。

心身的にボロボロになりかけたころ、ようやく“お通メドレー”が終わった新八に、

「…あ、ありがとう…」

不屈の精神力で土方がそう言うと、嬉しそうに笑うので悪気は無いんだと思うしかない。

「新八、終わったらとっとと帰るアル」

「そうだね、あまり時間とらせちゃ悪いし」

一番時間を取ったやつがぬけぬけとそう言って、二人揃って帰ろうとするのを土方が呼び止める。

この2人が居るのに、なぜアイツが居ないのか。

「おいっ」

「…何アルか」

「あー……アイツ……もふもふっとしたヤツはどうした……」

「定春は留守番アル」

「いや、そいつじゃなくて…」

「銀さんなら僕らが出かける前にもう居なかったんですよ」

ボケる神楽の代わりに新八が答えて、二人はさっさと部屋を出て行った。

1人残された土方は、またしても縄を解いてもらうのを忘れてしまっていたが、今度は叫ぶ気にはなれなかった。

『アイツも招待状貰ってんだろうが……なんで来ねーんだ、あの腐れ天パー……』

誕生日は休めなくて会うことができないのはいつものことだし、今年も聞かれたがそう答えた。

せっかく会える時間ができたのに、とふて腐れていると、

「なんつー格好してんの、お前」

頭上から聞きなれた声が聞えて目を開ける。銀髪のもふもふが呆れたような顔で土方を見下ろしていた。

「よ、万事屋っ」

「それともアレですか?銀さんに“私を好きにしてっ”っていうアピール?」

「誰がだぁぁぁぁ!総悟にやられたんだよっ、解いてくれっ!」

「えー……何もしねーうちに解くのは勿体無……」

「いいから解けぇぇぇぇ!!」

銀時の前で無防備な姿を晒しているのが恥ずかしいのと、来てくれて嬉しいのが合わさって真っ赤になって叫ぶ土方に、銀時はしぶしぶ縄を解いてくれた。

数時間ぶりに自由になった手足を伸ばしていると、隣に銀時が座る。

そして懐から取り出したのは、土方の大好きなマヨと煙草だった。

「誕生日おめでとさん」

「万事屋っ」

今朝からずっといらない物ばかり受け取ってきた土方は、すっかり煙草切れマヨ切れしていたためパッと嬉しそうな顔でそれを受け取る。

美味そうに煙草を吸う土方を見ながらニコニコしている銀時に問いかけた。

「……なんで煙草とマヨだよ……てめーの好きなモン持ってくるんじゃなかったのか」

そう聞かれるのが分かっていた銀時がにいっと笑う。

「銀さんの好きなモンを土方くんには上げられないからね、好きなモンの好きなモンを持ってきてみたのでっす」

好きなモンの好きなモン=煙草とマヨが好きなヤツが好き。

ぬけぬけとそう言った銀時に、土方は胸がきゅーんとする……のを誤魔化すために、マヨを掴むと一気にすすってやった。

「……おまっ……」

色気のない反応に銀時が嫌そうな顔をするのをざまーみろ、と思いながら土方はガラにもなく沖田にちょーーーーっぴり感謝したりするのだった。



 おわり



今日のために準備した話でしたが……長くなったなぁ……
一本しか書かないのだからちょっと頑張ってみたけど……
銀さんがほとんど出てこないので自分で笑ってしまったよ(笑)
ま、なにはともあれ、ハピバ土方!

あ……原作設定#200です……
本当はちょっと長めの書きたくない話を書く気になっていたのですが、
土方の誕生日はやっぱり原作設定だろうと、#200になってしまいました。
長編を書くかは未定になりました(笑)

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