原作設定(補完)
□その19
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#190
作成:2016/03/15
銀時は悩んでいた。
無理、絶対無理、到底無理、間違っても無理、と思われた土方への好意は、両想いという奇跡を起した。
あれから半年、交際は至極上手くいっていて毎日が楽しい。
が、楽しければ楽しいほど、黙っているのが辛くなってきた。自分が“白夜叉”であることを。
“元”とはいえ攘夷志士だった過去は、対テロ用特殊部隊である真選組で副長を務める土方の立場を悪くさせるのではないか。
想いが強くなれば強くなるほどそんなことを考えてしまい、らしくないと思いつつ告白する決意を固めた。
万事屋に泊まりに来た土方に、大量に用意した酒とつまみをすすめる。
とても素面では言えそうにないと思ったのだが、飲んでも飲んでも酔えなくて心臓だけがバクバクと早打つ。
「どうした?」
土方のほうは上手く上機嫌に酔ってくれたようで、口数の少ない銀時に可愛く首を傾げた。
いろんな意味で胸がきゅーっと締め付けられたので、もう観念して言うしかないと思った。
「土方……お前に話しておかなきゃならねーことがある」
「?」
ソファの上で正座して改まる銀時に、土方も真似して正座している。超可愛い。
「……俺が……攘夷戦争に参加してたのは知ってんだろ……実は……俺は…………しろ……」
ムラムラするのを抑え意を決して口にしようとした言葉を、土方はぴしゃりと遮った。
「言うなっ! 言ったら別れる!!」
「ええぇぇええっ!!」
さっきまでご機嫌だったはずの土方は、難しい顔で銀時を睨んでいる。どうやら何を言いたいのかすでに承知のようだ。
それをあんな言い方で遮ったということは、“別れたくない”と言ってくれてるのだろうか。
「…なんで分かった?」
「“桂と係わりがあって鬼のように強い真っ白な侍”、なんてそうそう居てたまるか」
捕まえた攘夷志士の口から“白夜叉”の名前が出ることは多い。その素性は明確にされていなくても、坂田銀時という人間を知れば知るほど確信に変わっていく。
真選組副長としては今だ桂と繋がりのある“白夜叉”を放っておけないと分かっているのに、土方十四郎としては“坂田銀時”を失わないために知らないフリをするしかなかった。
「イザというときに知らなかったことにしねーと組に迷惑がかかる。だから言うな」
「……それでいいのか?」
「それしかねーだろ」
“別れないため”の手段を選んでくれた土方に、銀時は嬉しそうに笑った。
……のだったが、
「来いよ、鬼の副長。まずはてめーからだ。この攘夷志士、白夜叉の首、とれるもんならとってみやがれい」
ぺろっと言っちゃいました。
目の前で土方が怖い顔で睨んでいるので、銀時は自分の失言に気付いて内心で絶叫。
『!!!! あぁぁぁああああ!!!』
「……ククク。ハハハハ、アハハハハ」
『壊れたっ!!?』
怒りのあまりに笑い出す土方に、銀時は動揺しながらもなんとか鉄之助も助けて一件落着。
わざわざ手錠までかけられ逮捕された挙句、嫌味を色々言われたものの今回の騒動の協力者として解放してもらうことができた。
「ダメだ。やっぱ、何も浮かばねェ」
そう呟いて病室のベッドに寝転がった土方は、
「……何が?」
そう問いかけながらドアの隙間に立つ、白いもふもふっとした頭を見つけた。
ようやく姿を見せた銀時に、土方は身体を起こしながら嫌味ったらしく言ってやる。
「約束を破った恋人への絶縁文だよ」
「や、破りたくて破ったわけじゃないですぅぅ。こう、雰囲気的にぺろっとね、なんとなくね」
ドアを少し開けてうろたえながら言い訳をする銀時に、土方は眉間のシワを崩して笑った。
幸い銀時が白夜叉であることは“元”であることを強調され不問にされた。おそらく佐々木異三郎が裏で手を回してくれたであろうことは気に入らないが、今は感謝するしかない。
「もういい」
お許しが出たので銀時はドアを開けて中に入って来た。
土方が差し出した手を握る。この手を離さずに済んだことを喜ぶ銀時に、次の釘を刺しておいた。
「許すのは“元”のうちだけだからな。現役に戻るようなら、今度こそ別れてその首とってやるから覚悟しとけ」
そうならないことを知っているかのような笑みに、
「銀さん、本気出したら土方くんなんかに負けないけどね」
「……上等だコラァ!」
お互い照れ隠しで負けん気を出し、繋いだ手をギリギリと握り締めるのだった。
おわり
バラガキ篇……好きだなぁ。
暗くならないような話を書きたくて考えた話です。
ま、暗くなっても最後のオチはいつものバカップルで終わるんですけどね。
銀さんがいい感じにヘタレてくれて満足です(笑)