原作設定(補完)

□その18
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陽が暮れたばかりの万事屋で玄関の呼び鈴が鳴り、銀時は重い足取りで応対に出てきた。

「はいは〜い……って、多串くん。どうした?」

今朝帰ったばかりの土方が訪ねてきたことにきょとんとしているから、

「……わりーのか。早く時間とれって言っただろうが……」

と答えたら嬉しそうに笑う。

「いやいや、思ってたより早かったからね。ま、どーぞ」

出たときとは裏腹に軽い足取りで部屋に戻る銀時に、土方は中に入りながらふと思い出す。

今日は一日いろいろモヤモヤしてたので連絡もなしに来てしまった。

「…チャイナは?居ねーのか?」

「アイツは新八と一緒に、お妙にくっ付いてスマイルの慰安旅行に行った」

「旅行?」

「どっかのゴリラストーカーが忙しい隙に、って言ってたぞ」

からかうようにそう言われても土方は反論できない。

どうりで今日は近藤が元気ないように見えたはずだ。昨夜スマイルに行って張り紙を見つけ落ち込んでいたのかもしれないが、土方もそれどころじゃなかった。

部屋に入ると持っていたレジ袋を銀時に差し出す。

「……やる……」

「お?土産?昨日のお詫びですかコノヤロー」

笑いながら受け取り早速ソファに座って中身を取り出す銀時に、土方は黙って向かいのソファに座った。

「プッチンプリン!甘い物とか気がきくじゃねーか……って、またプリン……プリン……」

次々袋から出て来るプリンにさすがにツッコミを入れたが、

「おいぃぃいい!全部プリンじゃねーかっ。多串くん、今はコンビニだっていろいろデザートがあるんですよ。そういうものをだね……」

並んだ10個のプリンを見て手を止める。“プッチンプリン10個”、記憶に新しい言葉だった。

土方をチラリと見ると、そっぽを向いて目を合わせないようにしているが顔が真っ赤だ。

見られていることに気付いてか、観念したように躊躇いながら白状し出す。

「……実は……昨日は仕事帰りにそのまま飲みに行ってたんだ……」

「へえ……あれ?でも私服だったよな」

「……それは潜入捜査だったからで……」

「副長さん自ら?大変だなぁ」

「……それで……連絡と証拠保存のために……………と、盗聴器を付けてた……」

「誰に?」

「…俺に…」

「ふーん…………って、昨日っ!!?」

顔を逸らせたままの土方が頷いたので、ようやく全てを察した。プリン10個の理由、土方が挙動不審な理由。

念のため恐る恐る訊ねた銀時は、

「……え、えっと……だ、誰かになんか聞いた?」

「……誰かにというか……録音されてたから、自分で聞いた……」

「ちょっ、おまっ、何してくれちゃってんですかぁぁぁあああ!!!」

叫びながら顔を両手で覆ってばったりとソファに倒れ込む。

手で隠しきれないところが真っ赤で、その恥ずかしさと居た堪れなさは今朝土方も体験したことだ。

だけど今の土方は銀時の本音を知っているから幸せな気分なわけで、銀時のためにも勇気を振り絞ってやらなくてはならない。

「……お、俺も好きだから……許してくれ」

「そんなんで許されると……ゆる……ええぇぇええ!?」

ガバッと起き上がって土方を見るが顔を反らしたままなので、立ち上がりテーブルの角に足をぶつけながら隣に座る。

「まじでかっ」

どうしても確認したいようで真剣に問いかける銀時に、土方もようやく顔を見て答えた。

「……まじだよ」

よほど嬉しかったのか、銀時は笑顔全開でそのまま土方を抱き締める。

「何だよっ、もっと早く言いなさいよ、そういうことはっ」

「て、てめーだって言わなかっただろうが」

「銀さんは小心者なんですぅ。フラれんの嫌なんですぅ」

「……俺だって嫌だったんだよ」

似たもの同士で同じことをずっと考えていた結果、言いたいことも言えずにいたことが可笑しかった。

大人しく抱き締められていてくれる土方に、銀時はおねだりしてみる。

「…つーか、さっきのそっけなさすぎるからもう一回言ってくんね?」

「言わねー」

「酷っ!」

あんなこと二度と言えるかと思いつつ、土方はニヤリと笑う。

「……俺は何度でも聞けるけどな」

「や、やめてぇぇぇ!!」

とんでもない弱みを握られてしまったことに動揺しつつも、土方が笑っているので銀時も幸せな気分だった。



 おわり



ただのバカップルのノロケ話でした。
仕事中とかにセリフを考えているときは、いいな、と思うセリフもあったんですけど、
実際に書いてるときにそれが出てこなくなったりします。
なので、なんかスッキリしない気分なんですが……ま、どれも似たようなもんだからいいか(笑)

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