原作設定(補完)

□その17
40ページ/40ページ



中に入ってきた銀時は、頭のほうに回ると土方の顔を覗き込むように座ったのが分かる。そして、

「ひっじかったく〜ん、あっそびましょ〜」

と囁いたので、思わず「遊ぶかぁぁああ!!」とツッコミを入れたくなるのをグッと我慢した。

返事が無い=寝ているのを確認したのだろう。

「……相変わらず熟睡してんなぁ……怪しい気配とかには飛び起きるくせに……」

“相変わらず”ということは、土方が熟睡すると何をしても起きないということを実証済みらしく、内心気恥ずかしくなった。

危険と背中合わせの職業だから、寝れるときにはしっかり寝るし、完璧な寝たふりもできるようになっていた。

寝ていると信じた銀時は、そのまま黙って土方の寝顔を見つめる。

そして冷たい指先でそっと目元に触れた。

「こんなに目にくまができるほど頑張んなくてよくね?どんだけ仕事好きですか」

今まで聞いたことがない優しげで寂しげな声に、土方の胸が苦しくなる。

起きているときに言われたら、間違いなく蹴り飛ばしていたに違いないぐらいだ。

聞かれていることも知らずに銀時は恥ずかしいことを話続ける。

「適当に手ぇ抜いて休みなさいよ。遊んでくんないと拗ねちゃうよ……銀さんの銀さんが」

下ネタに逃げるあたり銀時らしい。

「……こんなとこ忍び込んでまで会いたいとか思ってんの、俺だけなんだろうなぁ……」

さらに小さい声でそう呟いてまた寝顔をじっと見つめたあと、土方の髪の毛をくしゃりと撫でてて小さい溜め息をつく。

そして10分が過ぎたのか、立ち上がって庭への障子を開けると、見廻りの隊士の様子を伺いながら出て行った。

銀時の気配が完全になくなってから、土方は布団の中で悶絶する。

『何してんだっ、何言ってんだっ、あんの腐れ天パァァ!!』

恥ずかしさと怒りの中に、ふつふつと湧いてくる嬉しさ。

土方は布団を蹴り飛ばして起き上がると、屯所内の廊下への襖を開けた。

荒々しい足取りで進んで行くと、山崎がその姿を見てぎょっとする。ついさっき寝ているのを確認した土方が、鬼の形相で近付いてくるからだ。

「ふ、ふふ、ふくちょ……」

「言い訳は後で聞く! ………ちょっと……出かけてくる……」

こっそり銀時を入れたことがバレたらしいが、直後に出かけるということは後を追うつもりなのだろう。

朝までにご機嫌が戻っていれば切腹させられずに済むかもしれないので、

「いってらっしゃ〜い」

山崎は小声で暖かく見送るのだった。




先回りして待っていると、浮かれた軽い足取りで角を曲がってきた銀時が土方を見て、

「!!? ええぇぇええ!? あれ?だって今……ええ?」

塀の向こうの屯所と土方を交互に見比べて、滑稽なほど驚いていた。

うろたえている銀時に体当たりする勢いで身体を寄せた土方は、憮然とした顔で呟く。

「……あんなんで満足してんじゃねーよ……」

土方がここに居ることとその言葉の意味で、さきほどの土方が寝ていなかったことに気付いた銀時はとんでもない醜態を晒したことに赤面する。

眠っている土方にしか言えないことだったのに、居たたまれなくなって土方をそのままぎゅっと抱き締めると、

「やめてくんない。寝たふりとか、可愛いことすんのやめてくんないっ」

照れ隠しでブチブチと文句を言ってやった。

少し前まで眠れないぐらいの悩みの種が、文句を言いながら自分を抱き締めている。

いい年の大人が二人揃って照れ合っている姿はみっともないと思うのだが、今日だけは素直になってやろうと抱き返してやる土方だった。



 おわり



寝ながらこんなこと考えているから、眠れなくなるんだ(笑)
このあとはイチャイチャなんだけど、睡眠不足の土方に寝オチされちゃうのが良いと思います。
そんな土方も可愛いので銀さん萌え〜。


次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ