原作設定(補完)
□その10
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副長室で、短時間で数本の煙草を消費していた土方が、静かに開いて静かに閉まった襖に、振り向きもせずに言った。
「………用事が終わったならとっとと帰れよ」
「えっと〜…迷子? 多串くんの部屋から帰る道なら知ってんだけどさ」
土方の仕事が立て込んで長く会えなくなると、銀時は今日みたいにふらりと屯所に現れた。
会いにきてくれたのだと分かっていても、隊士たちの手前素直に喜ぶこともできなくて、山崎に追い出すように頼んでしまったのだ。
吸っていた煙草を消して、次のを取り出す気配がないので、銀時は土方に近づいて背後から抱き締める。
その腕の温かさだけで、銀時がどんな思いで会いにきてくれたのか分かるのに、さっきの沖田と2人でいたときの姿が忘れられない。
ほんのチラリとだけだが、2人が慌てて身体を離したように見えた。
「……総悟と……ずいぶん仲が良いんだな」
「……あ〜れ〜?多串くんやきもちですか?」
「………」
『まじでか!?』
いつもならガーッと噛み付くような顔で反論してくるはずの土方が、今日は黙って寂しそうな顔をしている。
ようやくツンツンからツンデレに進化してくれたのだろうかと喜ぶ銀時に、
「総悟の奴、俺には懐かねーくせに」
小さい声でそう呟く土方。思わず銀時もツッコんでしまった。
「そっちかよ!」
銀時が沖田と仲良くしているのを面白くないと思うが、沖田が銀時に懐いているのも寂しい。それが土方の本音だ。
それを察した銀時が、仕方ねーなという顔で小さく笑ってから答えてやる。
「沖田くんね〜。あの憎たらしい感じがかわいくて好きなんだよね」
“好き”という言葉を使われてドキリとした土方に、銀時はちゃんとオチも教えてあげた。
「21番目ぐらいに」
微妙な順位だなと思う。思ったほど高くはないが、親しい人間がたくさんいる銀時にとって、あまり係わりのないはずの沖田がそこあたりにいるのはけっこう高位置なのだろうか。
そんなことを真面目に考えていると、銀時は抱き締める腕に力を込め耳元に口を寄せ囁かれる。
「1番目が誰か知りたい?」
そんなこと聞かなくても分かる、ぐらいには自惚れているのだが、素直になれない土方も銀時の好みだというのも分かっているので、
「別に」
興味なさそうに言ってやると、銀時はさらに囁くように教えてくれた。
くすぐったくて甘くて、土方が身体を捩るのに合わせて銀時が抱き締めていた腕を弛める。
ここが屯所だというのは分かっているのに、今は触れていたいと土方の腕が銀時の着物を掴んだとき、何かに触れて落ちる感触があった。
「なんか落ち………」
恋人同士が熱い口付けを交わす大事なシーンだったのだが、土方が落ちた何かを目で追い、何が落ちたのかを察した銀時。
「ぎゃぁぁぁぁああああっ!あ、あああっ、あのっ、多串くんっ、それはっ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
バカな隊服に沖田を怒鳴りつけた自分が自らの意思でそれを着たことと、そんな写真を銀時に見られてしまったことと、純粋に激しい怒りで顔を真っ赤にしながら土方は銀時を副長室から蹴り出した。
「出ていけぇぇぇえええっ!!!!」
翌日。
「旦那ぁ」
「ごめん」
ボコボコに殴られた沖田と、蹴り出されてあちこち痛めた銀時が、団子屋で小さくなるのだった。
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はいっ!もうかなり最初のほうに考えた話です。
慣れない頃だったので、セリフの言い回しはけっこう変更しました。
パイレーツミニスカの隊服の土方。
分かる人には分かる某サークルさんたちの合同誌ですねぇ。
まだ自分が銀さんファンか土方ファンか悩んでいたころは、
「ひ、土方の太ももぉぉ」なんて喜んでしまったりしたものです(笑)
きっかけになった本に収録されていて、それから原作を読んだので、
しばらくは割と本気で「原作に出てくるのか?」と思ったりしました。
ミニスカ隊服が、です(笑)
さすがにそれは無理でしたが、それから私の銀土人生が始まったのです。
100話も続けられたのはみなさんのおかげです。
これからもがんばって書いていきますよ。
ちょっと長めのネタは全然書けていないので(笑)