短編

□気付かない想いの行く末
2ページ/2ページ

――深夜。


机に置いた電気スタンドの灯りの下、
残った書類に幾つか名前を書き付け判子を押す

あのポンコツ大王が珍しくやる気を出した為
今日は数枚、書類を確認して仕事は片付いた


ぐぐっと伸びをし、首を回すとパキッと音が鳴る
凝り固まった肩を拳を作って叩きながら、私は
部屋に閉じ込めた愛おしい彼女を思い出した



灯りの下、光る指輪と同じ物を嵌めた女性を思い
自然と口元が微かに微笑みを讃える


とんとん、と机に書類を落とし角を揃えた所で
クリップで止め、机の上に置くと私は床に作った
扉を開き、中の梯子を使いゆっくり地下へ降りた




暫く降りると、ぽっかりと開いた空間が鉄格子で
隔てられていた。その向こうで灯りが灯る
…私の愛する名前がそこにはいた



黒真珠の様な美しい髪がさらりと肩から零れ
柄にも無く、大きく心臓が高鳴る


鉄格子の鍵を開き、名前を抱き締めれば
まるで男を誘惑する様な甘い甘い香りが鼻を擽る




「いい子にしていましたか、名前」

「…」




小さく俯く彼女の顎を掬い、その桜色の唇に
自分のものを押し付けると微かに抵抗しようと
嫌、と首が横に数回振られる



「怖がる事はありません
此処には貴方を傷付けるものはありません」




安心させるように抱き締め、指を絡めると
冷たい指輪に口付けを落とす

外に出たい、と呟く彼女にジワリ…
どす黒い何かが湧き出すのを感じ、気付けば
名前の頬を張っていた



…白い頬が紅く染まり、じわじわと腫れる様を
見て私は髪を掴み、顔を上げさせる


苦痛に顔を歪める彼女の頬をもう一度張り
言い聞かせる様に耳元で囁いた




『いいですか。外の事は忘れなさい』

『誰も貴方の心配等していない』

『お香さんも白澤さんも桃太郎さんも
唐瓜さんも茄子さんも一子と二子も』

『誰も貴方の事等覚えていません』

『私だけが貴方を見て、こうして来ている』

『貴方には私だけ居ればいいでしょう』











「…は…い」




小さく頷いた彼女の頭を撫でれば、嬉しそうに
私の手に擦り寄る名前



ゆっくりゆっくり私の色に染め上げてあげますよ







自分から唇を重ねる彼女に愛おしさが増す

そのまま、ベッドへ押し倒し私は
彼女の中へ私の愛を何度も注ぎ込んだ






「…早く出来るといいですね」





眠る名前の腹に指を這わせ、
溢れ出した愛を掬い取り、私は口に含んだ
















――――――――――――――――――――――


鬼灯様が病んだら、洗脳まがいの事
してきそうだなとか妄想する、この頃
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ