創作小説。
□lisa
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・18XX年4月、ヨーロッパの何処か
―むかしむかし、あるところに、リサというおんなのこがいました―
お母様は私の名前と一緒のこの絵本をよく読んでくれた。懐かしい夢だ。
「ん、ん〜」
背伸びして、ゆっくり目を開ける。窓は明るく、もう朝になってしまったようだ。あ、お母様にご挨拶しないと...
「お母様〜?」
部屋から出て、キッチンに向かっても返事はない。
私は、そこまでおかしくおもってなかった。お母様が朝からいないこともよくある事だったし、お父様が病気で亡くなられてからは私を育てるために働いてくれているのだから仕方がない。テーブルをみると、既に朝食は出来ているようだった。今日は、お母様特製のライ麦パンに、オムレツとサラダだった。まだほんのり温かい。その温もりに私はほんの少しだけ安心した。
「いただきます」
私は毎回、いただきますをいう。どんくさい私の為に死んでしまったり収穫された生き物たちのために。前に、お母様に私なんかいなくたっていいじゃない、と怒鳴った時、お母様は私の右頬を平手打ちして、何でそんな事をいうの!リサは私の大事な娘よ!と泣きつかれたこともあった。それからは私は自分を粗末にしなくなった。何より、お母様とお父様が悲しむ所を幼心に見たくなかったから。