Respect(Qコメから)
□そこに座りなさい、説教をします
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あなたの元に行きたいと何度願ったことでしょう。
あなたの温もりの無い寝具が、あなたの声の無い眠りと目覚めが、虚しくて仕方ないのです。
幸せに生きられるはずなどないと知っていたはずでした。
私もあなたも、真っ当に生きるには多くの命を奪いすぎました。
それでも、あなたと過ごした短い日々は、遠い幻を私に見せるほどだったのです。
あなたと私がいて、誰も私たちの罪など知らない町で、死ぬまで寄り添いあう。
願いは、それだけでした。
でも、あなたが最後に選んだのは、私ではありませんでしたね。
それが悔しくてならなかったのです。
だから、死んでやろうと。
さっさと命を捨ててあの世であなたに罵詈雑言を浴びせようとしたのに。
私は敵の情けをかけられて生きながらえてしまいました。
死に場所を求めていました。
危険な仕事を次々に引き受けて、多くの人間に命を狙われるようなことをしました。
五体満足ではなくなり、女としては生きることが叶わない容姿になり。
それでも私は生きていました。
羽がずたぼろになって地に落ちた蛾のように、悶えながらも這っていました。
今度こそ死ねると思った戦いで、私は視力を失いました。
暗い世界。あなたが見ていたのと同じ世界。
……否。私はあなたの世界はずっと暗いものだと思っていましたが、違いました。
朝は、太陽の光をかすかに感じます。
鳥の鳴き声や木々のざわめきが心地よく耳に響き、私を優しく起こすのです。
嗅覚と味覚が鋭くなって、とても久しぶりに朝食の香りが食欲を刺激して、料理を「美味しい」と感じさせました。
一口、二口と噛み締めて、いつしか涙がこぼれていました。
生きろというのですね。
私がこの先もずっとあなたのことで苦しむと知っていながら。
『生きろ』
懐かしい声が耳に届きました。
『もっと長く生きてから、俺に会いにきてくれ。お前が死んだら、俺のそばから決して離しはしないから』
いるはずなどない、幻だとわかっていても。
『いまのうちに、自由を楽しめ』
「……わかったよ、仕方ないなぁ……」
もう少しだけ生きてみることにしました。
あなたに、どんな説教をしようか考えるために。