長編小説

□華に愛を
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「あ…杉田さん、またいらしてくださったんですね。」


「はい、いつもどうも。」



沢山の花の香りに包まれながら、私はまた来てくれたあの人に笑みを零す。
私が経営している小さな花屋は、元は母親が経営していて、母が亡くなってからは私が継いでいる。
元々植物が好きで、花の香りや風にそよぐ花びらは、見ていて飽きさせないものがあった。
花言葉にも詳しく、来てくれたお客さんに合った花をプレゼントしたりもするのだ。



「今度はどちらに送るんですか?」


「友人の誕生祝いに。
照れくさいんで、控えめな感じお願い出来ますか?」


「ご友人様にですね。もちろん良いですよ、どんな花がお好きですか?」



杉田智和さん。彼がこの花屋に来てくれる様になったのは、ほんの三ヶ月前。
お店の前にある喫茶店で本を読んでる杉田さんと目が合った時からだった。ガラス越しの彼は、軽い会釈をして目を逸らした。
一週間、二週間おきに彼は喫茶店に顔を出していて、花の手入れをしながら私は、1人で静かに本を読んでいる杉田さんが気になりはじめた。
その頃は、まだ恋愛感情なんてなく、話をして見たい。ただそれだけだった。偶に目が合う彼と、一度だけ会話をしてみたい。そう思いながら、私は店先にブバルディアの花を飾った。



ブバルディア:花言葉
   空想 夢


  
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