□伍
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 人は皆、幻影≠ニいう存在を、知る必要がある。


旭 第伍話

 数日後の会議の報告を部下から受けた。正直面倒くさいし、疲れるから嫌だ。会議と言ってもどうせ、敵国についての対策だの作戦立てだのと、それぐらいだろう。前任の今は亡き吉仲大将(のクソ野郎)は、そうだった。あいつを殺して今総統の位にいる阿僧祇なんたらとやらも、多分そうであろう。何せ実力主義を掲げている。前任と比べればまだましだが、実力だけが全てなら、どうせ私の考えなど聞いてはもらえない。可視化出来る敵にしか目を向けていないのであるならば。まあ、普通はそうだろう。軍人でありながら幽霊や物怪の、確証性の無い類に恐れていては、役立たずにもほどがある。でも、知らないといけない理由がある。

 我々が戦っている敵国の中に、明らかに違う者共が、混ざりこんでいるから。

軍の人はそれを知らない。最早知ることを拒絶しているようにも見える。幻影≠ニいう存在を。不死の存在―自分たちと鏡合わせのような存在を。それが、この軍に危機をもたらす者だということを。あれは存在している。私の経験が、記憶がそう言う。私の考えを聞いてくれれば、敵国だけに集中できる。彼らは我々が直に向き合い、その存在を打ち消すべきだ。彼らは自分自身。正確に言えば、自分たちが忘れ去った感情や、強い思い、考えが具現化した存在だ。幻影らが我々を攻撃する理由は、思い出してもらうためなのだ。思い出すだけで、何とかできるかもしれない存在。それらが、今、何らかの理由で徐々に戦力を拡充し、襲撃してきている。その理由が分からないけれど、あと一歩で分かる…わかりそう、なのだが。

「あー…もうやだやだ、あのジジイと会うの」
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