長い夢

□2話
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それでも言葉にならない妙な声を時折あげる○○は、俺に手を引かれながら、未だに振り返ってジャックを見ていた。そんなに、ジャックが良いのか。胸がチリチリする。これは…羨ましい、のか。二人の仲が余りにも良いから。


 ―あんまりほっといてると、
       俺が貰っちゃうよ?―


ジャックの言葉が脳裏を過る。
確に二人の仲が良いのは、自業自得だろう。仕事を渡して、後の事はほぼあいつに任せて放っていたのは事実だ。俺は聞かれた事を答えていただけ。今までだってそうして来たが、彼女に対しては少しそれが酷かったのは自覚してる。

…仕方ないじゃなないか。彼女といると何でかさっぱり分からないが、調子が狂うんだ。素っ気なくし過ぎたせいか、その内○○もあまり来なくなって。それでジャックに言われたんだ。本気か冗談か、普段ひょうひょうとしているから判断は出来なかった。それでも。


(人に敵意を覚えたのは、初めてだ)


今思えば、あいつは俺よりも先に俺の気持ちに気付いてて、発破かけるために言ったんだろうけど…正直、思い出すだけで腸が煮え返るような気分になる。
あの時ついカッとなって、気付いたら胸ぐらを掴んでしまっていたのには、自分自身驚いた。申し訳ないと思ってはいるが…まだ謝ってない。


「ほ、ホークさん、ホークさんっ」
「ああ、すまない。少し早かったか…」
「あ、あの、…手」


考え事をしながら無意識に歩いていたからか、気付いたら○○は小走りになっていた。コンパスの差か。彼女の足音を聞きながら少しずつ速度を落として、丁度良さそうな速さを探す。

が、当の本人は歩く速度を気にしていた訳じゃなく、彼女の手首を掴んで引く俺の手を気にしていた。嫌だったのか。不安になって表情を伺えば、耳たぶあたりまで若干赤くなっていて、そわそわと泳がせている目は、じんわりと潤んでいるように見えた。

これは…どっちなんだろうか。けど何と言うか、少しだけ、意地悪してみたくなった。
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