長い夢
□1話
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(諦めろなんて、無理なの知ってるくせに…)
好きなの、知ってるくせに。なんで今更そんな事言うんだ。
あのぶっきらぼうな彼が、初めて、いい腕じゃないかって褒めてくれた、あの瞬間から。ストイックな所も、弟子は取らないとか言いながら私が困ってたらキチンと助けてくれる所も。
言い渡される仕事の鬼っぷりに何度も挫けそうになったけど。それでも好きだから。
(でも…)
そう言えば、と。こんなにもがむしゃらになっている理由を、今更ながら思い出す。実は材料の購入がてら経過の報告をする時とか、完成の報告以外で会話しようとするといつも素っ気ない対応をされていて。
忙しいからだと思って、今やってる作業を終わらせればまた話が出来ると思って。だからこそ躍起になって完成を急いでいたのだけれど。
本当は薄々気付いていて、それでも気付いてしまったら足元が崩れ落ちてしまう気がして。ずっと鈍い振りをしていた。私、良く思われていないんじゃないか、って。本当は知ってた。
「ウソウソ。そう簡単に諦めらんないよな」
目の前に座り込んでるジャックさんの口から出た「ほんと、君って健気だわ」なんて言葉には、苦笑が混じっていた。
その苦笑混じりの台詞が、報われるはずもないのに、と言っているような気がして。
「ジャックさん」
「ん?」
「…私って、嫌われてるんですかね?」
誰に、とは怖くて言えなかった。
そもそも言わなくてもこの男は分かっているし、話題の人物はその人しかいない。