短い夢

□ハロウィン2012 Ver.ジャック
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ハロウィン、私自身はあまり馴染みがないけれど、ここはハロウィンすらも盛大に楽しむらしい。
最初は乗り気ではなかったものの、郷に入りては郷に従えって言うし、どうせ強制参加だろうなぁ、と渋々参加を決意。衣装もちゃんとイベントでゲットしたし、お菓子だって人数分+α用意した。だってイタズラ、なにされるか分からなくて怖い。
ちなみに衣装は、酒場で入手したお嬢様風のゴシックドレス。ヘッドドレスは似合わなかったのでブラックリリーのついたシルクハットにした。うむ、完璧だ。


(ホークさんの所、最後だけど…お菓子が)


そう、事前に連絡があって、訳あって最後に来てほしいと言われている。それまでお菓子が持てば良いのだけど。凄い勢いでなくなっていくお菓子に、不安を隠せない。
トリックオアトリートなんて、恥ずかしくて言えないし、そもそもこんなコスプレ紛いな服を来て練り歩く事自体、恥ずかしい。そんな訳で、増える事なく減り続けるお菓子達。
これはもう、さっさとホークさんの所に行って終わりにした方が身のためかもしれない。


「やっばい、あと1個」
「お、○○見っけ。Trick or Treat♪」
(ひえぇぇ!)


無駄に発音の良い伏兵が現れた。
森籠りをしている筈のモーガンさんが、目の前に立ち塞がって通路を塞いでいる。何故こんな所に。人に合わないように、用心して裏道を通っていたのが裏目に出てしまったか。
暗がり、ナイフ、表情はニコニコの筈なのに、帽子の影で不穏な雰囲気を醸し出している。知り合いじゃなきゃ確実に不審者だ。
ナイフを弄っていた手を止めて私に向き合うと、菓子を寄越せと手を差し出してきた。


「な、何でこんな所に…」
「森にいると沢山人が来るからさ、避難だよ避難」


お菓子尽きちゃったし。
テヘペロ〜みたいな軽いノリで、さらっと言いやがった。私だってお菓子尽きそうなんだが。


「お菓子もう1個しかないんで、他当たってください」
「1個あるのに?くれないの?」
「…予約品です」
「予約ってホーク?」


分かってるなら遠慮して欲しい。黙っていると「ふぅん」なんて含み笑いをして、私の肩を掴んで、強く押して。背には壁の冷たい感触。顔の両脇はモーガンさんの手。まさに檻の中。


(壁ドンとかする人、初めて見た)
「ホークのイタズラと俺のイタズラ、どっちが良い?」
「既にしてるじゃないですか」
「ははっ、確かに。でも俺のイタズラはもっと凄いよ。○○限定でね♪」


ニヤリと笑った顔に、嫌な予感。
ホークさんなら笑って許してくれそうな気がする。そもそも彼がトリックオアトリート何て言ってる姿が思い浮かばない。
彼専用にとびきり美味しく作ったお菓子をこの男にあげなきゃいけないなんて、凄く癪だけど、身の安全には勝てなかった。
バスケットに入っていた最後のお菓子をモーガンさんの胸に押し付ける。


「どうぞ」
「お、くれるの?」


お菓子を受け取ったモーガンさんは、すんなりと離れていった。最後の1個…まぁ良いか。何か思ってたより嬉しそうにしてるし。


「じゃ、先急ぐんで」
「お菓子サンキューな〜♪Happy Halloween!」





〜ジャック・モーガンさんの場合〜


(どうもあの人、苦手なんだよなぁ…)
 

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