長い夢

□2話
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初めて触った○○の手は思っていたよりも細く小さくて。何より気になったのは、彼女の手には全くもって不釣り合いな、あまりにも多い擦り傷だった。


「作業中も素手なのか?」
「えっ…と、あの…その、」



歯切れが悪い。目線が定まらず、きまりが悪いと言わんばかりだ。今しがた材木を抱えていた手も、保護する物は一切着けていない。…まさかずっと素手、だったのか?

今まで見ていた筈のジャックは、グローブを着けるように言わなかったのだろうか。振り返ってみてもジャックは素知らぬ顔で作業を続けている。…いや、あいつは何も悪くない。そもそも俺が最初に教えるべきだった。
初めて教えた時の手際の良さに、経験者かなにかと思っていたが、見当違いだったようだ。


(ここまで無知だとは…)


責任転嫁しそうになった自分を落ち着かせるために、軽く深呼吸をした。
それにしても、手当てはしているのだろうか。刺の処理もおざなりで、ちゃんとしているようには全く見えないんだが。


「…今日は帰るぞ」
「ぅえっ、ブナとか…斧、は」


一先ず、傷だらけで痛々しい手や腕に薬を塗るべきだ。グローブはその後で良い。頼んだものは…後で取りに来よう。

そんな事を考えながら○○の手を引いて歩き出せば、其処ら中に散らばった今日の収穫分の心配をする声が聞こえた。
そうか、こんなになってまで頑張った成果だからな。心配なのは分かる。


「ジャック、○○の収穫分取っておいてくれ。後で取りにくる」
「はいはい、ごゆっくり〜」
「う、うえぇぇ…!」


離れた所で材木を探っているジャックに声を掛ける。
どうせ後からまた来る予定があるんだから、用が一つや二つ増えようが問題ない。
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