LOVE ME DO!
□初恋
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「いっらっしゃいませ、こんばんは」
深緑色の帽子を被って
白いシャツに赤い小さなリボンを着けて、
紺色のカーディガンを羽織った彼女が
目を細めて、
絶妙な角度に首を傾けて、
ニッコリと僕に言います。
「グッドイブニングです」
その笑顔がマニュアル通りの挨拶だと理解しながら、僕は毎回ドキッと胸が高鳴ります。
「今日は寒かったですね、雪降ってましたよー」
手の動きを止めないまま、彼女は僕をチラリと上目遣いで見ながらが言います。
「はい、昼過ぎには止みましたケド」
ぶっきらぼうに聞こえたでしょうか?
「寒いので風邪引かないでくださいね」
そい言った彼女からお釣りを受け取る時、
少しだけ手が触れて、
凄く、
酷く、
冷えきっていて。
そんなにも身体を冷やして、風邪を引いてしまいそうなのは貴方ではないですか?と
言いたい言葉を飲み込みました。
「ありがとうございました。お気をつけてお帰りくださいませ」
ニッコリと。
どうやら僕は貴女に癒やされたくて
ここに通っているようです。
初恋。
スーパーの定員さんに
ドキドキ胸を高鳴らせている事は誰にも秘密です。
─END─
→あとがき