LOVE ME DO!

□メリーメランコリック
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あの日、あたしは透とサヨナラをした。



あたしの切なる願いはただ、彼が素敵なパートナーに出逢い、その人を離さず愛を注いで育んでいくこと。


彼の歪みきった性質を正してくれる相手が見つかれば、彼は少なからず前よりは幸せになれるはずだと、あたしは信じている。




ふと思い出すのは満足そうにニマニマ笑う彼の姿。

したり顔や、剥れっ面、余裕綽々の表情…

当時はどれもあたしの怒りを煽っていたけど、今となっては、あたしはそのどれもを愛していたのだ。



キミは大きく変わらなくてはいけない。


だから、あたしはあなたから離れたのだから。


キミにはヒーローのような屈託のない笑顔なんて到底、出来やしないだろうけど…人は寄り添ってくれる相手によって変化できる生き物だ。



あたしも然り。

きっとあたしを誰よりも愛してくれる人に出逢う日が訪れるだろう。

その時が来たら、あたしが透と過ごした日々は取りこぼすことなく思い出になり、それが宝物にすら成り得るだろう。




今日は雨が降っていてあたしの心は少しだけアンニュイになっていたけど、今はそれでも前に進もうと必死に藻掻きながら生きている。



胸にポッカリ空いた穴だって時間が癒してくれることをあたしは知っている。


それはあたしが積んできた経験値が証明している。


どんなに辛い恋を終えても新しい恋が芽生え、そして愛が注がれ育っていくと、かつて空いていた穴は塞がり綺麗に彩りを魅せる。

それが、また新たな経験値となり人は成長するのだから。



だから、透にも前を見ていて欲しい。


まだ『あたしなんか忘れていいよ』とは胸を張って言ってあげられない自分も、心のどっか片隅で見え隠れする日もあるけれど、あたしはそれを乗り越える力があるんだから──────クヨクヨなんてしない。


あの日の自分が下した決断を否定することになってしまってはならないのだ。




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