短編
□早く会いたくて
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木枯らしが冷たい、師走の中庭で舞桜は箒を掃きながら溜め息をついた。
『土方さん、遅いな‥‥。』
会合があるから、出かけると言って屯所を出たのは、お昼過ぎ。
あれから、二刻経とうとしているのに、まだ帰って来ない。日暮れまでに帰ると言っていたのにな‥。
太陽は、もうすぐ沈んでしまいそう。
おかげで、舞桜の心境は穏やかではなく、さっきから『せっかく乾いた洗濯物を草履で踏んで汚してしまったり』‥‥‥、お茶を淹れようとすれば、『茶筒の手が滑り茶葉が床に落ちてしまったり』とミスばかりを起こしている。
そんな危なっかしい姿を見て、千鶴ちゃんから家事休暇令を出されるし。
初めのうちは、縁側で空を眺めて静かに過ごしてたけど、全然落ち着けなくて 現在に至る感じ。
土方さん‥‥昨夜も夜中までずっと仕事をしてたし体調大丈夫かな‥。
年の瀬で治安も少し悪いという噂も聞いたし‥。
いつも新選組のために無理をしてばかりの恋仲の土方が心配でたまらない。
出会った当初は、ただの憧れの1人だった。
ゲームの攻略キャラとして見ていただけなのに、こっちに飛ばされて、一緒に生活をするうちに
1人の男性として好きになった。
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