異国の日常:第2章
□第2話
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そうそう。すっかり言い忘れていたけれど、私はつい最近坊ちゃんに1つの命令を受けた。それは
『ファントムハイヴ家に害があると判断した場合、坊ちゃんに言うことなく自己判断で動いていい』
というもの。
だから今回1人で赴いているのもその命令に従っているから。しかし、出世したものよね。自己判断していいってことはそれだけ信頼されているってことだもの。
森を抜けると目的の建物が見えてきた。
マフィアにしてはなかなかに立派なお屋敷。というかアジト。
劉の情報では構成員は多め。
でも、みんなどんぐりの背比べ程度の実力しかない。
だっけ?
だったら早い。
とっとと突っ込んで潰せばいいだけ。
何処から潜入しようかと屋敷の周りをグルグルしていると玄関のあたりで見慣れた燕尾服が……
「と、止まれ!!」
「ドコの輩だ!!?」
「ああ。申し遅れました。私…ファントムハイヴ家の者ですが」
戦闘を開始した。
何にしてんだ。何でここにいるんだ。坊ちゃんは何処だ。
聞きたいことは山ほどある。
セバスが玄関先のマフィア共を片付けたのを見計らって側に寄った。
「何しているの?」
「おや、見かけないと思えば、貴女も来ていたのですか」
「こういう仕事は私の仕事でしょう?セバスは坊ちゃんについていなきゃだめじゃない」
そう言いつつも嫌な予感がしていた。
そう、彼は坊ちゃんについていなくてはいけない。じゃあ坊ちゃんは今どこに?
セバスは私が最も警戒していたことを口にした。
「その坊ちゃんがこちらのお宅にお邪魔しているのですよ。なのでお迎えに来たのです」
「じゃあ、何で、そんなに、のほほんと、してんだァァァァァァ!!!!」
バカなのかこいつは。一大事では済まない。坊ちゃんが誘拐されただなんて、もし何かあったらどうする気だ!!
「大丈夫ですよ。なんせ、坊ちゃんですから」
その根拠のない自信は何なんだ。
「それより、早く行かなくては今は5時30分。ギリギリですよ」
「夕食がでしょう?知ってるわよ……」
スッカリ忘れていた。
こいつは悪魔で、人間のマフィアなんて屁でもないんだった…。
呆れながらセバスについていく。
扉を開け、中に入ると凄まじい数の弾丸が私達に降り注ぐ。
が、大した問題ではない。坊ちゃんが誘拐された方が問題だ。
ひらりと銃弾を交わし、持っていた太刀をスラリと抜く。
セバスも何かしら武器を手にしたようなので、そちらを気にするのはやめて、向かってくる敵方に刀を振るう。
と言っても銃を切り落とすぐらいだけど。
西洋人は接近戦がダメね。銃をなくして仕舞えば戦う意思なんてもうどこにもない。
狼狽える連中に手刀を落として眠らせる。
どんどんと湧く鼠共をあらかた蹴散らして辺りを見るとセバスの姿はなかった。
ちくしょう。
置いて行かれた。
屋敷の奥で銃声と悲鳴が聞こえる。
私が行く必要はなさそう。
少々不満ではあるが、外で待っておくことにしよう。