異国の日常
□第18話
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「今回はありがとう。最初は正直嫌だったけど…。物産展は楽しかったし、何より藍猫と滄波君に会えてよかった。」
嬉しそうに、そして少しだけ寂しそうに笑う劉。
さっきからどうしてこいつは寂しそうにしているんだろう?
「それはよかったよ。仕事がこっちであるときはいつでも寄るといい。我も屋敷に遊びに行くよ」
「坊ちゃんの許可を取りなよ。もっとも。お前の場合は勝手にくるんだろうけど」
劉はその言葉には答えずに、小さな包みを取り出し、私の手に乗せた。
「これは?」
「本当は昨日の帰りにでも渡そうと思ったんだけどねぇ。」
「開けても?」
「もちろんだよ」
私はゆっくり包みを開けた。
「……綺麗」
ため息とともに自然とその言葉が出た。
入っていたのは首飾りだった。
トンボ玉を革ひもで固定した、なんとも日本らしいシンプルなものだったが、私にはこのくらいが丁度いい。
「ありがとう。…とても気に入った。中の模様は…桃?」
そう言うと劉の肩が一瞬跳ねたような気がした。
「どうしたの劉?」
「なんでもないよ。棗の言ったように、その花は桃だよ。我の国では一般的な花だ。」
「そうなんだ。」
劉の言葉に思わず微笑み、もう一度トンボ玉の中の桃の花を眺める。
桜も梅も椿も好きだが、桃の花も綺麗だ。
桃色とはよく言ったもので、淡い色がなんとも言えない。
「棗」
あまりにトンボ玉に夢中になっていて、劉をほったらかしにしてしまっていた。
「ごめん、つい見惚れ……」
続きの音は出てこなかった。
気がついたときにはもう遅く、私は劉の腕の中にいた。