異国の日常
□第10話
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次の日の夜
「棗。新人のメイリンです。家女中(ハウスメイド)として雇いました。」
……。
「よ、よろしくお願いしますだ!!」
……。
……え?
「早いよ!!え、何?もう目星はついてたの?聞きにきたの昨日だよね?」
あまりの速さに驚きを隠せず若干キャラが壊れる。
「ファントムファイヴ家の執事たるもの、このぐらいできなくてどうします」
「うん。言うと思ったよ。」
まあいいや。
仕事が楽になりそうだし、何より女の子なのは嬉しい。
「よろしくメイリンさん。九重棗です。この屋敷で1ヶ月前程から執事補佐をやっています」
「では指導等は任せましたよ。部屋は後ほど用意しますので今日は棗の部屋でお願いします。今日はもう上がって大丈夫ですから。」
「りょーかい。行きましょうかメイリンさん」
「ハ、ハイですだ!」
「荷物はその辺でいいですよ。それと、ベッドひとつしかないので添い寝で勘弁してください」
「構わないですだよ。」
部屋に着いて、とりあえず大まかに準備をしていく。
もともと物は少なかったから時間はかからないけれど。
「…えっと、棗さん」
「どうかしました?」
呼ばれて振り返る。
メイリンさんは顔を真っ赤にしてもじもじしながら言った。
「呼び捨てで構わないですだ。年も近そうだし……。」
「失礼かもしれませんが、メイリンさんいくつですか?」
「21ですだ。棗さんは?」
「20です。」
「やっぱり!ひとつしか違わないですだ!私ずっと年の近い友達が欲しくて……。よかったら敬語は無しにして欲しいだよ!!」
……友達…か。
あんな仕事してたから私もろくな友達なんかいなかった。
断る理由なんてない。
よね?
「わかった。これからよろしく。メイリン。こっちも敬語は抜きでいいよ。」
そう言って右手を差し出す。
するとメイリンの顔がぱあぁぁっと明るくなった。
「こちらこそよろしくですだ!棗ちゃん」
そして両手で手を握り返してくれた。