異国の日常
□第9話
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「厄介なのに目をつけられたわね」
紅茶のお代わりを入れているとマダムからそう言われた。
「そうですね。」
「でも、劉があそこまで言うのって珍しいと思うわよ」
「そうなんですか」
としか答えられない。
正直あいつは敵としてインプットしてしまった。
「クールなのね〜。そうだ、棗あなたも一緒に飲みましょう。」
「いぇ、私は使用人ですので、お客様とご一緒するなど……」
「私からのお願いよ。ここの使用人はお客様の要望を無下にするのかしら。それに、此処で誰かとたわいのない話するなんて久しぶりなの。」
すごいなマダムは。
敵う相手じゃない。
「かしこまりました。」
私はマダムの正面に座った。
「さっきの続きなんだけれど、劉は…まぁ見ての通りの正確なんだけど、あなたに向けるような眼差しを今まで見たことがないわ」
「と言われましても……。わからないです。眼差しって殺気の篭ったやつですか?」
「違うわよ。てか、あなた達なにがあったのよ」
「ちょっと色々」
「そう…じゃなくて!!多分劉は棗の事好きになったんじゃないのかしら?ってことよ!」
「……は?」
「いいわねぇ〜。主のお客との恋。演劇一本分は書けるわよ〜」
なんでそうなる!?
「マ、マダム!!ちょ、ちょっとお待ちください!おっしゃっている意味がわかりません!それに……。きっと彼は私をからかっているのかと。」
「そうかしら。私はそうは見えなかっ「そうなのです!!イーストエンドで私は色々とやって来ましたから。」
口をつぐんだ私をしばらく眺めていたマダムだったが、
「悪かったわ。こう言う話題って好きなのよ。年甲斐もなくはしゃいでしまうわ」
「いぇ、マダムのせいではありません。私が……弱いから」
「……。ねぇ棗。あなた自身のことを教えてくれない?」
「かしこまりました」
3人が戻ってくるまでの時間、私はマダムに自身のことを話した。
勿論、私が殺し屋で有ることも含めて。
それにしても、『好き』という言葉……。
それはきっと両親が私に向けていたものとは違うものなのだろう。
それぐらいはわかる。
けど、それしかわからない。