異国の日常:第2章

□第1話
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ロンドンから少し離れた森の中。
その中にある手入れの行き届いた屋敷が名門貴族ファントムハイヴ家のお屋敷。
そこで執事補佐として働いているのが私こと九重棗だ。

女の身でありながら男物の執事服に身を包み、今日もセッセと屋敷の中を磨き上げる。
しかし、与えられた仕事は午前のうちに終わらせる主義。だから専ら午後からは自身のための時間に当てている。


「はっ!」

「てやっ!」


裏庭で愛刀を振るう。
なぜ一介の執事が?
と思うだろうが、ファントムハイヴ家の使用人なれば必要なこと。
理由は割愛させてもらう。

そう言えば、さっき銅鑼の音が表でなっていた。
また坊ちゃんと上司である執事長の賭けだろう。
いずれ、勝負に呼ばれないか心配だ。

鍛錬はアフタヌーンティーまで。
坊ちゃんの部屋からいい匂いがし出したら頃合い。
私はタオルで汗を拭き取り、着替えるために一度自室に戻る。

着替えが終わったら次の仕事。
ディナーの準備の手伝いを……

「棗すぐに来なさい!!」
「せめてノックをしてよ!着替えがまだ終わってなかったらどうするのよ!!」
「急かすだけですが?」
「悪魔か」
「えぇ」

茶番を終わらせてもらう。
何か問題が発生したのだろう。
こんなに息を切らせた上司のセバスチャンことセバスを見るのは久しぶりだ。

「それで、何があったの?」
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