異国の日常

□第18話
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「本当に伯爵の屋敷まで送らせなくても大丈夫なのかい?」
「だから平気だって。私が弱くないのはお前がよく知っているだろう?」

さっきからこのやり取りを何回しただろうか。


朝起きて、朝食をとり、いざ帰ろうかとすると劉が馬車を呼んで送らせると言い出したのだった。
ようやく説得した頃には予定していた汽車の発車時刻を大きく過ぎていた。
それでも、1日に汽車は何本もあるからと私と劉はロンドンのターミナル駅に来ていた。


「貴族でもないんだし、わざわざ呼ぶ必要なんてない。予定どうり汽車で帰るよ」
「我は棗を心配しているんだよ。もし、棗が破落戸にでも絡まれたらと思うと…」
「いやないから。後、恋人でもないんだし、そんなに心配しないでよ。そういうのは好きな娘に言うべきだ」

そう言うと劉は一瞬だけ寂しそうな顔をした……ような気がした。

「…?」
「棗。そろそろ、時間だよ」
「本当だ。」

私は荷物(と言っても愛刀ぐらいなんだけれど)を持つと汽車の入り口の階段に足をかけ、劉の方を見た。
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