異国の日常
□第2話
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シエル坊ちゃんと依頼という名の主従関係を結び、私はファントムハイヴ邸に来た。
「此処だ。セバスチャン、早く開けろ」
「はい」
セバスチャンが一礼してドアを開ける。
それにしても
『セバスチャン』って長いな。
セバスでいいか。
今まで何度か貴族の屋敷には行ったことがあるが、ここも例外なく大きい。
これだけ大きければたくさんの使用人がいるのだろう。
(ギイィィィィ
ドアが完全に開かれる。
すると中から1人の老紳士が出て来た。
「おかえりなさいませ、坊ちゃん。暖かい紅茶の準備ができております。」
彼はセバスチャンと同じように一礼をした。
「あぁ。」
「タナカさんありがとうございます。」
「いえ、それで、そちらのお嬢さんですかな?」
「そうです。棗。こちらはファントムハイヴ家の家令(ハウススチュワード)のタナカさんです。」
「#棗です。よろしくお願いします」
『タナカ』と言うからには日本人なのだろうか?
なんか親近感が湧く。
「タナカです。こちらへどうぞ、仕事着の準備が出来ております」
ん?
仕事着?
「坊ちゃん。浴衣ではダメなのですか?」
「言っただろう執事補佐だ。ここではウチの執事服を着てもらう。
動きにくいことはないから安心しろ」
「わかりました」
「では、こちらに」
私はタナカさんの後ろについて行った。
……何かが可笑しい。
…使用人が…少なすぎる。
「あの…タナカさん。此処の使用人って…2人だけなんですか?」
「ほっほっほっ、何をおっしゃる。3人ですぞ」
「そうですけど!!それにしたって少なすぎますよ…」
タナカさんは少し困ったような顔をしたがやがて話し始めた。
「1年前火事があり、屋敷のほとんどの者が命を落としました。その際、旦那様…先代も。生き残ったものは私と坊ちゃんだけ…。」
…だから坊ちゃんはあんなに幼いのに当主なのか。
「すみません心ないことを聞きました。」
「いえ、いずれは知ってもらうことです。問題ありませんよ」
タナカさんはこの上なく大切なんだろうな。
この家が。
坊ちゃんが。
部屋についた。
すると、タナカさんはおもむろに口を開いた
「棗さん。お願いがあります。
この老いぼれでは満足に坊ちゃんをお守り出来ません。
ですから……坊ちゃんのことどうかよろしくお願いします。」
「わかりました。
依頼を受けたその瞬間から私は坊ちゃんにこの命を捧げる覚悟は出来ています。」
「ほっほっほっそれは心強い。では、着替え終わりましたら坊ちゃんのお部屋にお越しください」
「はい」