紺碧の刃

□役人さん3
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ゲートにはすでに予定の本丸の担当が待っていた。
「担当見習いの浅葱です。よろしくお願いします」

身分は隠して、自己紹介をする。
「担当です。こちらこそ」

第一印象は悪く無い。もしかしたらこの人は白なのでは?と淡い期待を抱く。しかし、それはすぐに裏切られてしまった。

「浅葱ちゃんだっけ?可愛いよね。こんな地位嫌じゃない?君の返事次第では上に君の昇進を提案してあげることもできるよ」
「いいえ〜結構です〜」

前言撤回。こんなセクハラかましてくる奴はほぼ黒なのを浅葱は長年の経験で知っている。
腰に帯びている青江がほんの少し熱い気もする。おそらく怒っているのだろう。

「(青江、私は大丈夫だから落ち着いて)」
「(…君がそう言うなら今はおとなしくしとくけどね……)」


「おや、どうして刀を?」
「も、模造刀です。男神ばかりの場所では危険だからと先輩に貸していただきました」

担当の男はそれ以上追求せず、ゲートに向かった。しかし審神者の次に刀剣男士と関わっていながら、浅葱の持っている刀が『にっかり青江』であると気づかない担当に浅葱は呆れる。

「(バレるよりマシだろう)」
「(そうなんだけどさぁ〜)」

頭に響く青江の声に返事をしつつ、ゲートに入っていく担当を追いかける。

浅葱はこの瞬間が嫌いだった。ここをくぐるといろいろなことを思い出す。
契約から逃れられずボロボロになっている刀剣男士。乗っ取られ、嘆き悲しむ審神者たち。自分の過ちに気がつき刀解を求める刀剣男士。深すぎる愛情に怯え、助けを求める審神者たち。

そして、それを見るたび審神者になることができなかった自分を悔やんだ。青江に申し訳なくて仕方がなかった。どうやっても自分の霊力が増えるわけでは無い。それこそ、乗っ取りに使われるようなチートでも使わない限り。でも、浅葱はそれを望まない。望んではいけないことを身に染みてわかっているから。

腰にある青江にそっと触れ1つ大きく息を吸うと浅葱はゲートに足を踏み入れた。
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