文学者達ノ恋模様

□恋乞いしい故意
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「何処行ってたの、国木田君」
 帰って来るなり、不機嫌な面の太宰。今日は厄日か何かか、と心のなかで舌打ちをする。
「散歩だ」
「誰と?」
「……何だ、やけに突っ掛かって来るな。何が気に入らない?」
「あー、ほんとさ、国木田君は、解ってないよねえ」
 太宰は国木田に歩み寄り、すんすんと匂いを嗅いだ。
 犬みたいだな、と国木田は関係無いことを考える。
「こんなさぁ、私の嫌いな奴の匂い付けてきちゃって、何れだけ密着していたの?」
 ぞっとして、太宰の顔を凝視する。
 そんな様子の彼も気に入らなかったのか、太宰は少し強めに国木田の耳を噛む。
「いっ……」
「ね、国木田君……あんまり油断してちゃ、駄目だよ?」
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