文学者達ノ恋模様

□自殺志願者と人喰いの虎
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「どうして泣いているんですか」

ハッとする。
慌てて自分の目尻をぬぐうと、確かに濡れていた。

「……はは……敦君、聞いて」
「はい……何でしょう?」

こんな気持ちは……初めてだ。

「嬉しいみたいだ……私」

敦の目が見開かれる。しかし、其れも一瞬の事。直ぐに情けなく笑った。

「……有り難う……御座い……ます」

怖くなんかない。本当に怖いのは、独りになることだ。
誰かといる暖かさを知ってしまった。誰かと過ごす心地よさに気付いてしまった。独りで生きるには、あまりにもこの世界は優しすぎる。

9、8、7、6

「次が在るなら……何に生まれたい?」
「え……そうですね、凡人でいいです」

5、4、3

 優しい人で居られるように。誰かを傷付けてしまわないように。

「ふふ、凡人かぁ。敦君らしくて良いね」
「太宰さんは……何が良いんですか?」
「そうだね、私は……」

2、1

 願わくば、次も君と。

「君をきちんと愛せる人になりたい」

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