文学者達ノ恋模様

□仮装は嫌いですか?
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太宰治は困惑していた。
目の前にいる人物は、自分が何をしているのか、自覚があるのだろうか。
色白の肌に良く映える、黒いフリルのスカート。首もとで結ばれた赤いリボン。それを身に纏っているのは、中島敦、その人だった。
彼は、顔を真っ赤にしながら、太宰の玄関先で言う。
「えっと、その……いつもお世話になってるので、何かお礼を、と……えっと、それで、探偵社の皆さんに何が良いのか聞いたら……これで、太宰さんの所に行って来いって……、それで」
「敦君」
「は、はい」
「ちょっと良いかな?」
ガシッ、と肩をつかむ。
「え、ちょ、太宰さん」
「良いよね?」
「は、はい」
ずるずると部屋に引きずり込まれる敦。それを隠れ見て、どこぞの探偵社員達がにやけていたのは、言うまでもない。
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