文学者達ノ恋模様

□あとに花は咲く
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太宰治は、裏切り者である。
最も、中原中也からしてみれば、こんなに嬉しいことは、他にはない。
彼から受けた嫌がらせは数知れず、やりかえそうものなら倍でかえってくる。
だが、そんな【面倒事】も、彼が失踪した日に終わったと、そう思っていた。


「あ、お帰り。ちゅーや」
近所のスーパーで買ってきた食材を、思わずその場に落としてしまった。
なんで、なんで奴がこんなところに。
住所も変えたのに。
「手前……どうやって調べた」
「うふふ、まあ、そんなに邪険にしないでよ」
ジリ、と一歩後ずさる。後ろ手にドアノブを握った。戦うことも出来るが、何故か今日は逃げた方が良い気がする。凄まじい悪寒だ。
逃げるなら、今か?
一瞬。
ほんの一瞬、後ろに気を取られた。
「っ……?!!」
気がつくと、彼の顔が、目の前に。
そして
「手前、なにを、んっ、んぅッ?!」
窒息しそうなほど深いキスを。
ふやけるほどキスをされたあと、太宰は下唇をぺろりと舐め上げて、言った。
「嫌がらせ、かな……?」
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