文学者達ノ恋模様

□虎は月下に身を焦がす×3
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堕ちて、堕ちて紅い華
乱れ乱れて落ち椿
酸いも甘いも味わって
其れでも淡く染まるのは



この前、意図せず後輩に襲われた。

太宰は、深いため息と共に自分の机に頬杖を付いた。
別に、痛かった訳ではない。気持ち善かったし。だが。
「そうじゃないんだよねぇ……」
問題は其ではない。太宰自身、ネコでもタチでもいける口なのだ。
では、一体何が違うのかというと。
「愛でたい……」
可愛がりたいのだ。
可愛くよがる後輩……敦の姿がみたいのだ。
自分がヤられていては、愛でられない。何としてでも立場を逆転させたいが、無理強いはしたくない。
「いや……でも、一寸くらいは良いかな……」
一寸、一寸だけ手を縛るだけ。あ、薬使うのも在りかな。ヤバイ、鼻血でそう。
そうと決まれば、後は計画して実行するまでだ。
頭脳の無駄遣いだと、誰かさんが訊いたら叫びそうな、抜かりない計画を建てていく太宰。
その途中でふと、最初に襲った時の敦の顔と、襲われた時の敦の顔を思い出した。
どちらでもいい。
どちらでも構いはしない。
いや、むしろ、どちらも手に入れたい。
強欲なる悪魔のように、太宰はそっと舌を舐めあげた。

どの敦君も、私だけのモノにしてあげる。



堕ちて、堕ちて紅い華
乱れ乱れて落ち椿
酸いも甘いも味わって
其れでも淡く染まるのは、
鉄線の花弁。
 

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