文学者達ノ恋模様

□虎と蜘蛛とグッド・バイ
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 中島敦は、彼の上司である太宰治に呼び出され、某ホテルへとやって来ていた。
 呼び出されたと言っても、実際は探偵社が以来を受け、それ関する呼び出しである。
「でも……何故ここ?」
 こんな居心地の悪いところでなくても、と疑問に思わないわけでもないが、そこで受け入れてしまうのが敦の性だ。
 意外と綺麗なベッドの上に腰を下ろし、ばふっと倒れ込む。
「うわ〜……ふっかふか」
 もふもふ顔を埋めている間に、いつの間にか眠気に襲われた敦。
 襲い来る睡魔に勝てず、彼はそっと目をつむった。



「敦君」
 頭上で聞きなれた声がする。
「あっ、だ、太宰さん、すすすみません!!」
 体を起こそうとするが、何故か動かない。何か、強い力で押さえ付けられている。
「え、あれ、なんっ………?!!!!」
目だけで辺りを見渡した彼は、驚きのあまり言葉を失った。
 自らを縛り付けているのは、見知った異能【羅生門】だ。当然、その奏者である、芥川龍之介も、敦の枕元にたっていた。
「だ、だだざ太宰さん、あ、あ芥川まで、え?何で?ですか?」
「敦君、愛してる」
「いッ?!」
「僕も、太宰さんと同じだ」
「いッ、いや、はい?あの、その、は??」
 突然のことに頭が回らない。回らない所か、ぷちパニックを起こしている。
「どちらかを選べとは言わぬ」
「そうそう。平和的にね。どっちも、好きになってくれれば良いから」
 太宰が敦の横に腰掛け、ベッドが軋む。顔に掛かった髪を、色白の手で払い除けられた。
「まぁ、後から付いてくる愛も在るらしいからね」
「焦らなくても良いぞ、人虎?」
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