文学者達ノ恋模様
□白虎と羅城門の鬼
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「おい」
芥川は、雑踏の中で呼び止められた。不機嫌なその声の主は、不服そうに芥川を睨み付けていた。
「なんだ……貴様か、人虎」
いきなりガンを飛ばされて、いい気分はしない。少し尖った返答をすると、敦はあからさまに顔を歪めた。
「誰だったら良かったんだよ」
「……?」
「太宰さんだったら……良かったのか」
何をいっているのだこいつは。
自分より二歳年下の虎とは、全てが終わった一ヶ月後に、付き合い始めた。
付き合って三ヶ月。
進展が全くないことにしびれを切らしたのは、人虎だった。
「……何故あの人が出てくる」
「だってお前……」
僕といるのに、太宰さんの話ばかりするじゃん
不安そうに、腹立たしそうに、芥川を睨む。よくみると若干涙目である。
普段とは違うその様子に、芥川の何かが揺れる。何時もは無意識の内に抑えていた……
頭を振って、冷静さを保とうとするが。
「僕の事も、かまえよ、馬鹿」
タガ外れるとは、この事か。