文学者達ノ恋模様
□罰げぇむ
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太宰の野郎が逃げて(3巻参照)、俺は芥川に呼び出された。嫌な予感が胸をよぎる。が、ここでやつに会いに行かないのも不自然だ。
まぁ、別に、やつが勝手に逃げただけであって、俺はなにもしていない。 しらを切ればいい。
そう、思っていたのに。
「何故、逃がしたんです?」
俺よりも年下で格下の芥川が放つ、異様な殺気。否、憎悪。その気迫に、思わずたじろぐ。
「な、なんだよ。そんな確証、何処にもねぇだろ」
「……どの口がほざくんですか、中也さん」
「…」
「分かってますよね、自分がこれからどうなるか」
「…だーかーらぁ、俺は逃がしてねぇしー」
「確かに、証拠も何も有りません。上に伝えても無視されるでしょうね。でも………」
あなたもあの人も許せない
「な…に?」
なんだこいつ。ヤバい。
「俺は、帰るぞ」
そう言って踵をかえす。一刻も早くこの場から離れたかった。
だが、次の瞬間。
俺の目の前に黒く深い闇が広がった。
「ひっ……」
「…後悔、してくださいね?」
そこから先はもう、思い出したくもない。痛み、痛み、痛み。
傷つけられない体の代わりに、俺のプライドとか、ズッタズタにされた。
好き勝手に羞恥心を煽られ、最終的には、外にほっぽり出された。今、俺が居るのは、路地裏だ。
…俺が、現在身に付けているもの。下着は何もない。裸体に、ブカブカのTシャツを、羽織っているだけだ。服は芥川に破かれた。
それなら、まだなんとかなる。
問題は、下にある。
俺の中で、うごめく玩具。無理矢理突っ込まれたソレは、ただただ気持ち悪いし、何より痛い。
取り出したいのはやまやまだが……自分で手ぇ入れて出すとか、有り得ねぇ。断固拒否。
「はぁ……」
かといって、このままにしておくわけにもいかない。こんな格好を誰かに見られようものなら…あ、無理無理、死ぬわ。
俺はどうにもできない状況に漠然とした不安を抱える。
あ、畜生、雨まで降ってきやがった。虚しくなる。
無意識に、生暖かい雫が頬を伝った。あー、意味不明。なんだよ、これ……
「中也……?」
不意に聞こえたその声に。
俺は不覚にも安心してしまった。